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2019-03-19 07:33
(連載2)「大阪都構想」を評価する
加藤 成一
元弁護士
このような歴史的経過を経て、2010年に当時の橋下徹大阪府知事を代表とする大阪維新の会は、2015年までに大阪府全域を「大阪都」とし、大阪市、堺市の各政令指定都市を解消して大阪府と一体化させる「大阪都構想」を発表した。しかし、前記の通り2015年5月の住民投票では僅差で否決され、当時の橋下徹大阪市長はその後政治家を引退した。自民党大阪府連は「大阪都構想」に反対しているが、反対の理由は、「大阪都構想でなくても大阪戦略調整会議を作れば、府・市の調整が可能で二重行政などは無くせる。大阪市を特別区に分割するとかえって調整が困難になる。都構想は将来の道州制の実現にマイナスである。」などというものである。そして、今回の維新による「知事・市長ダブル選挙」については、自民党をはじめ大阪維新の会以外の政党は、「党利党略」「私利私欲」「選挙の私物化」などと維新を激しく非難攻撃し、「都構想に終止符を打ち、大阪での維新政治を終わらせよう」とのスローガンのもとに、自民党をはじめ大阪維新の会以外の政党がそろって維新候補に対抗する構えを見せている。
しかし、2015年11月の知事・市長のダブル選挙では自民党は共産党とさえ連携協力して維新候補に対抗したが惨敗している。翻って、前記の「大阪都構想」に関する過去の歴史を見ると、必ず大阪市長や大阪市議会が強く反対したために実現していないことが明らかである。これは大阪市が解消されることに伴う現職大阪市議会議員定員86名全員の失職や地位喪失による不利益や恐怖心が根底にあると考えられる。そうだとすれば、都構想に反対する最大の既得権者は大阪市議会になる。それこそ議員個人の「私利私欲」と言えよう。2015年4月13日付けの産経新聞は、「自民党大阪府連からは、都構想が成立すると大阪市議会議員の職がなくなるとの悲鳴が漏れた。」と報道している。
今後の関西経済発展の起爆剤とされる2025年の「大阪・関西万博」の誘致成功は、たまたま大阪維新の会からそろって大阪府知事と大阪市長が出ていた結果、両者が一致団結して誘致活動に全力を傾注した成果である。このような事実上の府・市一体化による成果は、大阪市夢洲地区へのIR(統合型リゾート施設)の誘致や大阪北区梅田大阪駅北側地区に林立する超高層商業ビル群建設と大規模再開発、日本一超高層のアベノハルカスをはじめとする大阪ミナミの大規模再開発、大阪関西国際空港への激増する外国人観光客誘致、高校授業料無償化など、枚挙に暇がないであろう。卑近な例で恐縮であるが、以前は長年にわたって大阪市営地下鉄の駅のトイレはどこも老朽化し不潔であったが、現在では見違えるように新装され清潔になり清掃も行き届いている。
しかし、「大阪都構想」のような、統治機構として長期的視野で制度的に府・市の一体化が行われなければ、過去のように、府・市の利害関係が対立し、法的にも政治的にも行政の迅速性、効率性の向上や二重行政の解消等が担保されないことは明らかである。ちなみに、産経新聞が3月12・13日に実施した大阪府民50人・市民50人の有権者100人を対象としたアンケート調査では、「大阪都構想」賛成が40パーセント、反対が32パーセントであり、「ダブル選挙」を評価する49パーセント、評価しない32パーセントであった(同紙3月17日付け朝刊)。以上に述べた通り、「大阪都構想」は、21世紀大阪及び関西の成長発展のみならず、西日本ひいては日本の成長発展にとっても、国民生活にとっても、計り知れない利益をもたらす可能性を秘めた構想であると評価し得るであろう。(おわり)
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(連載1)「大阪都構想」を評価する
加藤 成一 2019-03-18 20:35
(連載2)「大阪都構想」を評価する
加藤 成一 2019-03-19 07:33
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