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2019-02-20 10:01
(連載2)ファーウェイ創業者の世界観
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
注目すべきは、ソクラテスやプラトンの思想から、ルネサンスが生んだシェイクスピアの演劇やミケランジェロの彫刻、さらには米国の海洋大国化をもたらしたマハンの海権論まで、欧米を貫く開放の文明史を評価する一方、中国が夜郎自大になって世界の潮流から取り残された文明史を反省している点だ。100年までの義和団のように、自分たちを盲信してはだめで、広い世界的視野を持ってウィンウィンの広報活動を行わなければならない、と寛容で進取の精神に富んだ世界観を説いている。
冒頭では、「西洋で遭遇した問題を解決するにはまず、西洋の価値観を十分に認識し、彼らの立場に立って彼らを理解しなければならない」と訴えかけ、中国人がこれまで自分たちの考え方で世界を理解しようとしてきたことを戒めている。イギリスが世界を支配し、各国の芸術品を自国に集めたことを、中国人は略奪だと考えるが、イギリスの側からみれば、生命を危険にさらして芸術品を収集し、リスクを冒しながら継承してきたということになる、と大胆に事例を示している。彼の言葉でなければ、たちまち愛国主義者たちの攻撃にさらされる発言だ。
中国の改革開放も、トウ小平が「窪地を切り開き、税率を下げて外資を招いた」ことから始まったことを指摘し、「現在解決すべきビジネス環境の大きな問題は、西洋の価値観を十分に認識し、ファーウェイの価値観と西洋の一致した部分を明確にし、ある程度の共通認識を形成することである」と説く。中国人の西洋に対する深い理解と認識はまだ不十分で、「西洋が世界での発言権と主流価値観で優位を占めている現状において、我々はただ西洋の立場で西洋の価値観を理解し、西洋の思考方法で対話を行ってはじめて有効な意思の疎通ができ、問題を解決する方法が見つかる」とまで言い切っている。
「ファーウェイの価値観を伝える広報活動にあたり、重要任務の一つは、いかにして当地の文化を重んじ、当地の言葉を用いてファーウェイの物語や地元への貢献を語るかということだ」とし、成功例として、日本企業がドイツ進出に際し、ボンやデュッセルドルフなどの都市に桜を植樹し、観光名所にまでなったケースを紹介している。講話の随所に、謙虚に他国の先例を学ぼうとする姿勢がひしひしと感じられる。ファーウェイ事件で頭に血が上った愛国主義者たちの熱を冷ますのに十分な内容だ。米国が言うことを鵜呑みにし、それに従っていれば間違いないと盲信する一方、台頭する隣国のことはなんでも疑ってかかっている日本人に対しては、偏った世界観はいずれ落伍者を生むだけだ、という教訓を読み取ることもできる。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)ファーウェイ創業者の世界観
加藤 隆則 2019-02-19 19:57
(連載2)ファーウェイ創業者の世界観
加藤 隆則 2019-02-20 10:01
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