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2019-02-05 09:14
(連載2)第2回米朝首脳会談に向けてのつばぜり合い
斎藤 直樹
山梨県立大学教授
これらの米朝協議においてトランプ側が譲歩を示していることが日米韓協議筋の話として伝えられた。「米朝 段階的非核化を議論」という見出しで1月27日の『読売新聞』に掲載された報道によれば、米朝協議の基礎になっているのは二段階からなる非核化の取組みであるとされ、それによると、第1段階において寧辺核施設の廃棄と査察、豊渓里(プンゲリ)の核実験場に対する査察、ICBM開発の凍結と廃棄、東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場の査察などをトランプ側は要求しているという。これに対し、トランプが「相応の措置」を取るならば、トランプ側が示唆している第1段階の要求に応じる可能性があることを金正恩側はほのめかしたという。ただし、「相応の措置」として、開城(ケソン)工業団地や金剛山(クムガンサン)観光など南北交流事業を例外措置として制裁対象から除外することを要求したことが伝えられている。また金正恩側が米国の要求を誠実に履行するならば、前述の例外措置をトランプ側は考慮する一方、石油や金融制裁の緩和に応じる姿勢は示していない。こうしたことから、2月中に米朝首脳会談が開催される運びになったとは言え、果たして細部が詰められるかどうか全く不透明である。
こうした中で開催される第2回米朝首脳会談であることを踏まえると、掛け声倒れの政治ショーに終わった第1回首脳会談の二の舞になるリスクを抱えていることが案じられる。もし「完全な非核化」を目指すのであれば、トランプが改めて真正面から申告の提出を金正恩に求めるのが筋である。とは言え、トランプが申告の提出に拘るならば、首脳会談が決裂しかねないことをトランプも感じ取っているであろう。むしろ第2回米朝首脳会談を政権浮揚にとって格好の機会として捉えているトランプとすれば、金正恩との蜜月ぶりを最大限に世界にアピールすることで可能な限り外交成果をあげたいところであろう。とは言え、またしても曖昧かつ抽象的な文言の「共同声明」を発して幕引きとなれば、厳しい批判は免れないことはトランプも自覚しているであろう。
こうしたことから、米朝高官協議や実務者協議で取り上げられたような争点で妥結するかどうか着目される。これと関連して最近、ポンペオが非核化への言及を避け、「米国民の安全が最終的な目的」である旨の発言を行っていることが気になるところである。そうした発言は米国本土に直接脅威を与えうる対米核攻撃能力とされるICBMの廃棄に焦点を絞ると共に一部の経済制裁の緩和や解除に向けてトランプ政権が路線を転換しようとしていることを示唆している。これでは「完全な非核化」の完遂まで経済制裁の解除はないとしたこれまでの路線から脱却することになりかねない。ところがこの間、トランプ政権の路線に衝撃を与えるような問題提起が米情報機関の責任者からなされた。1月29日にコーツ(Daniel Coats)米国家情報長官が米上院の公聴会で、「北朝鮮は大量破壊兵器を保持しようとしており、核兵器や製造能力を完全には放棄しそうにない」と力説し、金正恩には非核化の意思などないのではないかと疑義を挟んだのである。多くの識者がコーツの見解を支持しているだけに、コーツの問題提起は思わぬ波紋をトランプ政権に投げかけることにつながった。水を差された格好になったトランプは「情報機関の人々はもう一度、学校に戻るべきだろう」とすかさず反論した。
こうした中で、1月31日にトランプ政権は一転して従来の路線に戻ることをほのめかした。米朝実務者協議の担当者であるビーガン(Stephen Biegun)北朝鮮担当特別代表は同日、改めて核関連活動の全容を盛り込んだ申告の提出と検証の実施を北朝鮮に要求する一方、その見返りについて議論する余地があることを示唆した。ビーガンが示したトランプ政権の路線は数日前に明らかになった日米韓協議筋の内容と多少ならずとも食い違う内容である。2月下旬の第2回米朝首脳会談の開催を控え、米朝の駆引きが激しさを増すと共に事態は一転、二転することが予想される。(おわり)
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(連載1)第2回米朝首脳会談に向けてのつばぜり合い
斎藤 直樹 2019-02-04 22:01
(連載2)第2回米朝首脳会談に向けてのつばぜり合い
斎藤 直樹 2019-02-05 09:14
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