これに対しトランプが中国にセカンダリー・ボイコットを突き付けるに至り、習近平はトランプに同調する格好で決議採択の支持に回った。しかも中国はこれまでと違い決議の履行に協力するようになった。2017年の終りまでに対北朝鮮経済制裁が実効性を持つに至ったと考えられるのは習近平指導部が制裁の履行に前向きになったことが大である。これが対米核攻撃能力の獲得に向けて狂奔を続けていた金正恩指導部の目論見を狂わした重要な事由であったと推察される。金正恩が2018年元旦に急遽、戦術転換を図り平和攻勢に打って出た背景には経済制裁が殊の外効果を発揮し始めたことがあろう。とは言え、金正恩指導部が急に非核化への取組みに言及したことは習近平としても歓迎せざるをえなかった。金正恩が非核化への取組みを唱える以上、習近平は評価せざるを得ない。朝鮮半島の平和と安定は中国にとって極めて重要な戦略上の利害であり、朝鮮半島情勢が劇的に変化することを習近平指導部は望まない。習近平は金正恩の首脳会談の申し出を快諾した。3月26日の中朝首脳会談において習近平と金正恩は「漸進的・同時的措置(progressive and synchronous measures)」に合意したとされる。