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2017-11-15 21:10
(連載1)米中会談から日本が汲むべきメッセージ
加藤 隆則
汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
習近平はトランプを招いた故宮参観の際、こんな言葉を残している。「中国の歴史は5000年以上前にさかのぼるが、中国の文化は悠久で、途絶えることがなかった。今日まで文化が継承されているのは、中国だけで、黒い髪、黄色い肌を保つ我々は、自らを龍の子と呼んでいる」。習近平は、スローガンである「中華民族の偉大な復興」の起点を中華文明の発祥に求めており、民族の一貫した伝統を強調しなければならない。それぞれの文化が混ざり合い、刺激し合いながら発展してきた人類史の尺度からすれば、非常に狭隘な見方だ。「龍の子」も多くの少数民族には縁のない伝説だが、56民族と14億人を束ねるためには、中華民族の歴史としてこの架空の物語を言い続けるしかない。
漢族を中心とする中国人は、概して宗教には関心が薄いが、歴史、そしてそれを記録する文字、言葉を強く信仰する。いくら憲法や共産党規約で社会主義を標榜していても、「主義」を信じているわけではない。「中国の特色を持つ社会主義」という但し書きがついている。「中国の特色」が前につけられたとたん、「社会主義」の看板を掲げながら国づくりを進めてきた毛沢東や鄧小平の歩み、つまり人が残した歴史へと信仰の対象が転換している。
過去の米中首脳会談に様々な歴史の仕掛けがされてきたのも、歴史を受け継ぎ、新たな歴史を刻むためだ。日本人にとっても他人ごとではない。外野で野次を飛ばしても始まらない。一緒にゴルフをしたぐらいで「友情」をたたえる児戯とは次元が違う。日本人としてどのようにこの歴史の教訓を受け止めるか、という視点を忘れてはならない。米中両首脳は、皇帝が天下を治める権威の中心である故宮の中心軸に立った。皇帝のみが通行を許される中心軸には、舞い上がる龍の彫られた階段もある。その中心軸に並び、米中のトップ二人で天下を語り合うという趣向だ。2年前の抗日戦争勝利70年記念では、習近平が中心軸上にある天安門楼上から軍事パレードの指揮をした。米国の要人は参加しなかったが、対日本において米中は事実上の同盟関係にあった。
実は、習近平とトランプの両国首脳が訪れた太和殿の前庭は、その抗日戦争に深いかかわりがある。軍閥が支配していた中華民国時代の1918年、当時の徐世昌大総統が第一次世界大戦の戦勝国として内外の軍を集めた閲兵式の場所が、太和殿の前庭だった。太和殿では1945年10月10日、日本軍の華北方面軍司令官の根本博中将から中国の第11戦区司令官、孫連仲将軍に降伏状が手渡され、日本による北京占領に終止符が打たれた秘話もある。(つづく)
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