1.「ASEAN+3首脳会議」と「東アジア・サミット」の相互関係
「ASEAN+3首脳会議」(APT)と「東アジア・サミット」(EAS)は、両者の関係が不分明なまま併走状態を続けている。今回発出されたAPT議長声明を見ると、APTは「長期的な東アジア共同体構築目標実現」のための "the main vehicle”であることが再確認(第2項)され、さらに "essential part of the evolving regional architecture”(第18項)であるとされている。これに対しEASは、その重要性(a significant role, an important component)は認められているものの、共同体建設における役割は、ARF、APECを含む他の多数の既存地域メカニズムと同様に補完的(complementary)である(第2回EAS議長声明第19項)とされている。このことを考えれば、東アジア共同体構築に向けての取り組みの中では、あくまでAPTが主たる役割を果たし、EASは従なる対話フォーラムにすぎないとの位置づけが、ASEAN+3+3の16ヶ国間の共通認識となりつつあることがかなり鮮明になった。
しかも、ASEANが「中心になってdriving force の役割を果たす」(APT声明第17、2項、EAS声明第18項)ことが強調されるだけでなく、EASは「ASEANの国でASEAN首脳会議の折に開催する」という2005年12月の第1回EAS宣言の合意もそのままとなっている。今回右のような基本体制が改めて確認され、定着しはじめたとみるべきではないだろうか。両サミットのこのような基本的関係を大きく変えようといった議論はもはやほとんど聞かれなくなり、日本などがEASの場で提案された具体的諸会議の名称に「EAS」という冠を付して、EAS自体のプロジェクトたる性格をよりはっきり打ち出そうと努力したのに対しても、全く賛同が得られなかった。従って、「APTとEASの役割が逆転したかのようにみえた」とまではとてもいえないのはなかろうか。