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2017-07-02 10:59
(連載2)疑問のムーディーズによるAIIB債の“格上げ”
倉西 雅子
政治学者
第3に、アジアにおけるインフラ需要が巨額な資金を要することは確かなことですが、加盟国の返済能力には限界があることです。AIIBの設立は、世界銀行やアジア開発銀行に加えて、もう一つ、資金調達先が増えたわけですから、インフラ整備に取り組む諸国にとりましては朗報であったかもしれません。しかしながら、低利での融資とはいえ、インフラ事業には巨額の資金を要しますので、焦げ付かないとは限りません。さしもの中国も、最近では外貨流出に規制をかけており、AIIB債の“紙屑化”リスクが低いとは到底思えません。
第4の疑問点は、AIIB債の発行通貨がはっきりしない点です。人民元建てであれば、中国国内で起債すればよいわけであり、敢えてムーディーズに評価を依頼したとしますと、米ドル建てが中心となるのでしょう。仮に、米ドル、あるいは、ユーロや円などの他の外貨での起債となれば、外貨建てで融資を受けた国の返済リスクはさらに高まります。それとも、起債は外貨、融資は人民元、返済は外貨といった“からくり”で、中国は、AIIBを外貨獲得の手段としようとしているのでしょうか。
第5として挙げられる点は、賄賂が横行する中国の政治体質です。誰もが首を傾げるようなムーディーズの判断の裏には、習主席の面子にかけてAIIBを成功に導くために、巨額の“チャイナ・マネー”が動いたのではないか、とする疑いを人々に起こさせることでしょう。
昨年、IMFが人民元をSDRのバスケット構成通貨に決定した際には、その判断に対する疑義が呈されつつも見切り発車しています。結局は、この時の約束は反故にされ、中国政府による人民元国際化のための措置は遅々として進んでいません。AIIB債に対する懸念が現実化すれば、ムーディーズは、自らの信頼性に傷をつける結果となり、格付け機関としての“格付け”を下げてしまうのではないかと思うのです。(おわり)
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(連載1)疑問のムーディーズによるAIIB債の“格上げ”
倉西 雅子 2017-07-01 09:07
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(連載2)疑問のムーディーズによるAIIB債の“格上げ”
倉西 雅子 2017-07-02 10:59
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