ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2016-10-22 19:26
(連載1)日本がとるべきユネスコへの対応
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
日本政府は、ユネスコに対する今年の分担金など計約44億円の支払いを留保していると明らかにした。ユネスコでは日本は中心的な国であった。国連本体は、安保理常任理事国が拒否権を持ち、日本はどうやっても中核的役割は担えない。しかし、ユネスコはこれまで日本の関わりが深く、ユネスコでの発言権も強いものがあった。国連には敵国条項があり、日本は国連においては敗戦国である。その日本が戦後初めて加盟した国連機関がユネスコだ。教育、科学、文化で国を立て直そうとした日本にとってもユネスコは魅力があった。ユネスコは日本が国際社会へ復帰する最初の機関となった。日本がユネスコに加盟したのは1951年で、国連への加盟はそれから5年後の1956年である。
民間ユネスコへの関わりはもっと深い。日本の民間ユネスコ活動はユネスコ加盟前の1947年から行われている。現在も日本は世界の民間ユネスコ活動の中核を担っている。また、世界初の民間のユネスコ協会が発足したのも日本とされる。日本人はユネスコに対して好印象を持ち続けた。ユネスコも日本は非常に確かな加盟国と考えてきた。アメリカやロシアは政治的に分担金の留保を行うのに対して、日本はまさに優等生でありつづけた。ボコバ事務局長の前は、松浦晃一郎氏が1999年から2009年まで事務局長を務めた。
これだけユネスコに密接な関係をもっていた日本が分担金の支払いを留保するとは、ユネスコも考えていなかっただろう。2015年に「南京事件」関連資料を世界記憶遺産に登録したことが「ユネスコの政治利用」だと日本政府は批判した。しかし、今年の6月には、韓国や中国などの市民団体で作るグループが慰安婦問題に関する資料を申請した。こうした問題はやはり政治性を帯びる。慎重に作業がされるべきものだ。
文化大革命時の大虐殺や天安門事件を世界記憶遺産に登録するとしたら、中国は容認するだろうか。光州事件や済州島四・三事件などを世界記憶遺産に登録するとしたら、韓国は容認するだろうか。南京事件や慰安婦問題などよりも明確な資料がある事件であり、殺害された人の数も半端ではない。こうしたことをやり始めたら、教育、科学、文化で平和を築こうとするユネスコの活動は停滞してしまう。世界には非常に多くの紛争がある。アフリカで、中東で、アジアで、ヨーロッパで、南北アメリカで、内紛や国際紛争がある。それらをユネスコが世界記憶遺産をし始めたら、政治的な動きにならざるを得なくなる。(つづく)
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
(連載1)日本がとるべきユネスコへの対応
児玉 克哉 2016-10-22 19:26
┗
(連載2)日本がとるべきユネスコへの対応
児玉 克哉 2016-10-23 12:42
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会