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2016-09-10 12:03
(連載1)日韓スワップ協定で日本は何を得るのか
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
8月27日に「日韓財務対話」がソウルで開かれた。これは日本と韓国の財務当局が経済・金融問題を協議するもので、通貨交換(スワップ)協定の再開に向けての議論が始まるかどうかが注目された。日本は日本側からこのことを持ち出すことはないが、韓国からの要請があれば検討するというスタンスをとり続けてきた。今回は韓国側が要請してきたので、検討するということだ。日本と韓国の関係はこじれてきたが、日中間三カ国外相会議で日韓外相の二国間交渉が8月24日に日本で開催されて、非常によい雰囲気であったと報じられている。冷めつつある中韓関係を反映して、日韓外相会談の方が中韓外相会談よりも和やかな会談であったという。東アジア情勢は急速に動きつつある。
スワップ協定とは、韓国が経済危機になった時にウォンを担保にドルや円などの外貨を融通するものだ。ウォンの価値をあらかじめ決めておくので、その時のウォン=ドル・円のレートによっては日本が損害を受けることも想定される。もちろん協定上は、日本が経済危機になった時に円を担保にドルや円などの外貨を融通することも想定はされているが、実際には日本と韓国の経済規模や通貨の信頼性等を考慮すると起きえる事態ではない。日本が経済危機になる可能性があってもその場合には韓国が救える規模ではないこと、そしてそうした場合には韓国経済も少なくとも日本同様に厳しい状況にあると考えられるからだ。基本的に日本が韓国が経済危機の時に支える約束をして韓国の信用を担保するというものといえる。日本にはメリットがないという意見も強い。しかし視点を変えてみればそうとは言えない。交渉次第と言える。基本的に隣国の経済が破綻するというのは日本にとっても様々な被害がかかってくる可能性がある。韓国の国際関係におけるポジションは脆弱だ。経済破綻すると対中戦略、対北朝鮮戦略などでどのように動くかわからないところがある。
日本がしっかりと支えるということは地域の安定ということからも重要だ。また日韓貿易は縮小してきたといってもかなり割合はある。韓国経済が破綻すると日本企業にもかなりの悪影響があると考えられる。それとともに日本は韓国との外交交渉において強いカードを持つことになる。この通貨交換(スワップ)協定は「お互いに」ということをうたいながら、実際には日本が韓国を支えるというもので、これは日韓両国の担当者は当然認識している。日本は強い立場で交渉できることになる。だからこそ、韓国は自分の側からこの協定の要請をしたくなかったのだ。
日韓関係のここまでの冷え込みの要因の一つは朴政権のスタンスにあった。「反日・親中」のスタンスを明確にし、交渉さえも遮断してきた。慰安婦問題や竹島問題についての反日キャンペーンは目に余るものがあった。「問題を解決する」という姿勢はあまり感じられず、「日本を貶める」ことにプライオリティが置かれている感があった。対話さえ否定する状態では状況は悪化するばかりであった。
実際に、日韓の両国で国民感情は非常に悪くなっている。ワールドカップの日韓共催やヨンさまブームは今は昔の話となった。両国ともに国民感情にまで深く入り込む複雑なものになっているので、全体の雰囲気がすぐに変わることはない。あまりに反日路線が長すぎた。2~3年で終わっていれば短期の修復は可能であったろうが、朴政権以前から始まった反日路線はかなり長期にわたっている。朴政権で強化されたものだ。まずはこの路線を大きく変更することが必要だ。「極右」で「反韓」と批判される安倍首相だが、実際にはほぼ一貫して韓国には対話の要請を行っている。安倍昭恵首相夫人は韓流ファンとしても知られている。にもかかわらず、ここまで日韓関係は冷え込んだ。朴大統領の任期はあと1年半にすぎなくなった。その間、日韓関係の改善に自ら旗を振って欲しい。それくらいのことをしないのであれば、スワップ協定を結ぶ必要があるかどうか。慎重に考えなければならない。(つづく)
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児玉 克哉 2016-09-10 12:03
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児玉 克哉 2016-09-11 11:06
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