第1次安倍内閣の時に、前小泉総理による毎年の靖国参拝で一気に冷え込んでいた日中関係回復の一つのプロジェクトとして、「日中歴史共同研究」が立ち上げられた。古代から現代にいたる日中の交流の歴史を回顧し、停滞している日中関係を少しでもアクティブなものにしようとの狙いからだ。日本側座長を務めた、北岡伸一・東大教授(当時)は、「agree to disagree(意見を異にするということで意見を一致させる)」のが狙いだと、当時の論説で述べている。報告書には、両論併記的に日中の学者の論文が記載されている。この告書は2010年1月に発表された大部なものだが、第2次大戦後の記録、すなわち中国共産党政権樹立以後の記録は記載されていない。当時の新聞記事などからうかがうに、印刷の直前に中国側から強い要望で削除されたとのことだ。