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2016-01-14 21:52
(連載1)東アジアにおける日本の安全保障の展望
牛島 薫
団体職員
日経平均株価が年初来6日連続下落したのをはじめ世界経済は予想外の冷や水を浴びたが、一方で新年から北朝鮮が核実験を強行したり中国が南シナ海の人工島の滑走路の民間機離着陸を行ったりするなど、東アジアの安全保障環境は加熱の一途である。今年一年は、日本にとって安全保障面で大きな役割を果たすかコントロールを失うか重要な節目になる。
日本の周辺では、相変わらず中国、ロシア、北朝鮮と軍事力を用いることに躊躇がない国が緊張を高めている。それに対して日本は、今までになく適応的な施策をここ1年打ち出してきた。安倍内閣は苛烈な反対運動にも折れず安保法制を成立させ、かつ主要な支持層の一つであろう保守強硬派の反発を恐れずに歴史的な日韓合意を成立させるなど、安全保障面での弱点をひとつひとつ潰している。そういう点で、日本政府は今までになく賢明に見える。しかしそれにもかかわらず、今年の日本は、特に対中政策で難しいかじ取りを迫られるだろう。なぜならば、中国との本格的な対立を厭わない強い意志が、米国自身に実際あるのかやや疑問だからである。
オバマ政権が成立してから7年、対中政策はかなりの程度修正されてきたものの、一貫しているのは対中経済関係を発展させる方向性である。現在、アメリカの主な東アジア地域で行っている軍事的なパフォーマンスは、ある種予定調和であり抑制するに充分なものではなく調整されたものだ。他方で、パワープレーも見られたものの米中の経済関係を意図的に毀損するような出来事は起きていない。我々はその点しっかり受け止めねばならない。アメリカは経済面での遵法的姿勢や環境問題での翻意などに目が行き、日本が中国に対して感じている危機感とは裏腹に中国に期待を持ち続けているのである。
それを踏まえ、中国を制御するアメリカのカードとして経済制裁を期待する向きもあるようだが、それは実際的な手段となりうるだろうか。まず、アメリカにそういうモチベーションがあるのであろうかという点について考えたい。AIIBに反対しつつも、その設立に際して人的支援を行ってきたことや各種既存の国際機関での対中協力姿勢にみられるように、米政府が経済的な互恵を推進していくことに姿勢のブレはない。この一年で中国の景気後退が貿易輸出入のシュリンクをもたらし、日本との貿易も顕著に減少したが、景気が良好な米国とにおいてはそうはなっていないし相互依存関係を維持している。(つづく)
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