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2006-11-18 14:59
連載投稿(2)当面はFTA・EPAから共同体構築を
鈴木 馨祐
衆議院議員
複数国リード型の共同体を考えるとき、EUがなぜここまでの共同体となったのかは非常に良い題材である。EUの地域は歴史を遡ればローマ帝国という共通の祖にたどり着くのであって、現在のように多くの国、大国が並立するようになったのは、あくまでもその後である。このことが意味することは非常に大きいのではないだろうか。人間は全く新しいところに踏み出すのは心理的に非常に難しいが、昔に戻るというのであればその困難は大いに減少するものである。
これがEU統合成功の第1の要因とするなら、第2の要因は戦後の欧州の置かれた地政学的状況が後押ししたという点が考えられないだろうか。すなわち、ソ連、そして潜在的に自由社会内のライバルとしての圧倒的な存在であるアメリカという2つの強力な相手との競争に生き残らなくては、自立していけないという危機意識を共有できたことで、小異を捨てて大同につくという意識を、長年反目しあってきた独仏両国が持つことができたことが非常に大きいと思われるのである。経済的な必要性も大事であるが、特に反目しあいがちな複数の地域内大国を抱えるケースにおいては、このような政治的歴史的事情を背景とした大きな後押しがなければ、地域統合につながるような共同体の実現可能性は限定的にならざるを得ないであろう。
ここで、東アジア地域においてはどの程度の共同体の深化が可能かという命題に直面するのだが、東アジア地域は過去において1つの帝国であった歴史を持ち合わせず、また自由や人権、民主主義といった根幹的な価値観の共有すらできていない日中が共通の競争相手を持つということは、考えづらい状況にあるのが実態ではないだろうか。ましてや現状においては政治的要素を持つ中国を含む共同体は、上海協力機構のように中国のアメリカ牽制の一手段として使われることすら考えられる状況である。日本はもとよりASEAN諸国や韓国もそのようなことは望まないはずである。
このように見てくると、東アジアにおける共同体は、日本とならんでその主要メンバーの1つとなるであろう中国が、21世紀の今日においてなお共産党による独裁国家であり、人権や自由という価値観を共有できない国である現状においては、当面は経済的要請からの緩やかなFTA・EPA的なものに留まらざるを得ないはずである。安全保障や政治統合にまで踏み込むことには慎重でなくてはならない。(おわり)
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投稿履歴
連載投稿(1)超えられないハードル:東アジア共同体、どこまで可能か?
鈴木 馨祐 2006-11-17 16:36
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連載投稿(2)当面はFTA・EPAから共同体構築を
鈴木 馨祐 2006-11-18 14:59
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