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2015-03-12 20:07
錬金術で世界を席巻する中国マネー2400兆円
田村 秀男
ジャーナリスト
東京や大阪ばかりではない。2015年2月下旬、中国の旧正月「春節」。世界の主要都市がチャイニーズ・マネーに席巻された。中国人旅行者の「マナーの悪さ」は、海外に暮らすチャイニーズが「中国人の恥だ」と怒り出すほどだ。なるほど、銀座のあるデパートでは、中国人の若者がブランド品や宝飾品をウインドー・ケースから次から次へと取り出しては、スマホでパチリ。本国の家族や仲間に見せてどれがいいか、大声上げて相談。店内は喧騒に包まれる。地元客からは苦情が殺到する。さりとて、中国人を締め出せば売り上げを増やせない。ニューヨークの高級デパート、メーシーは苦肉の策をとった。一般客用の閉店時間午後9時を午後5時に繰り上げ、5時からは中国人団体客向け「貸し切り」とした。何しろ、中国人客は一人が買えば、それをみた者がそれよりも高い物を買いたがる。メーシーの思うつぼだ。
いったい、中国人のマネーパワーはどの程度か。中国人の買い物は、もっぱらデビットカード「銀聯カード」による。円代金は、中国の銀行に持つ預金口座から相当額の人民元が引き落とされる。そこで、中国の現預金総額(M2)はどのくらいあるか、ドル換算してみると驚くなかれ。14年末は20兆ドル強(約2400兆円)に上る。日本の7・5兆ドル(約840兆円)、米国11・6兆ドルを圧倒している。年間増加額は中国2兆ドル(約240兆円)で、日本30兆円強、米国0・66兆ドルは比べ物にならない。14年末の中央銀行の資金発行の年間増加量1に対するM2増加量の割合は中国5・3、日本0・42、米国1だから、中国人民銀行が刷るカネによる現預金創出力は爆発的で、人民銀行を支配する中国共産党は空前絶後の世界的錬金術師だ。
では、どのくらいの数の中国人がマネー・パワーをエンジョイできるのか。総人口は13億人だが、農民を中心に底辺の階層はまだまだ多い。中間所得層以上の数は、総人口の約1割と筆者は推計する。例えば、乗用車は税金が高く、ガソリン代も高価なので中間層以上でないと買えない。その保有台数は昨年末で約1億2000万台である。中間層の現預金シェアを約7割と仮定し、そこから中間層以上1人当たりの現預金をラフに見積もると、日本円換算で約1400万円になる。この水準は日本の全国平均よりも高い。
ならば、海外旅行ができる中国人中間層の購買力の高さに納得がいく。観光庁の訪日旅行者1人当たり旅行消費額は14年で24万円超で、米国人旅行者の16・5万円など他国人を圧倒している。国際通貨基金(IMF)は、人民元を「国際通貨」として今秋までに認定する公算が大きい。となると、北京は大手を振って人民元を増殖させては世界にばらまくだろう。そんなペーパー・マネーに振り回される世界は本当に大丈夫だろうか。歴史が示すとおりマネー・バブルは突然消失するのだ。
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