次に「ロシヤ・ウクライナ情勢の混迷」ということである。ロシヤについて、2014年3月のクリミヤ併合後も、ウクライナの内紛に介入する状況は、欧州諸国のロシヤへの警戒心を強めた。米欧がロシヤへの経済制裁を強め、新冷戦の標語も出る中で、NATOの役割が高まった。ウクライナ・プロシェンコ大統領は米議会で熱弁をふるい、米国の支持と援助を要請し、EUとの関係強化を目指しているが、プーチン大統領はウクライナ東部を支え、ウクライナに中立を迫り、中露接近が答えとの強い態度である。最近の「Foreign Affairs」では、シカゴ大学John Mearsheimer教授は“Why the Ukraine Crisis is the West’s Fault ”の論文で、「西側は自由という幻想で、ウクライナにまで領域を拡大し、プーチンを怒らせたとし、中国がカナダやメキシコを軍事同盟に囲うとしたら米国民の怒りはどんなものか?」と問う。「米国はウクライナの西欧化でなく、中立化を目指すべし。ロシヤは衰退大国であり、争う必要がないが、シリヤやイラン、特に中国への対応に必要だ」とする。米国にこのような意見もあるが、当面は、むしろ制裁を強める動きで、プーチン大統領も妥協の様子はなく、ロシヤと西側、特に米ロ関係に出口が見えない。