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2013-12-29 01:31
(連載)靖国神社参拝と歴史認識問題(2)
若林 洋介
学習塾経営
靖国神社は、一宗教団体であるから、日本政府の立場に反する歴史認識を宣伝することに問題はない、と言えるのか。あるいは、靖国参拝を実行している総理大臣は、サンフランシスコ講和条約において日本政府が公式に表明した立場と矛盾する立場を取っていることにならない、と言えるのか。総理大臣は日本を代表する立場にいる。その総理大臣が靖国に参拝することが外国で問題視されている理由は、総理大臣の参拝が「東京裁判の不当性を暴く」という靖国神社の主張に対する共感の表明であると見なされているからである。
過去の欧米諸国の靖国神社参拝問題に対する批判のほとんどは、靖国神社の持つ「英霊の慰霊・追悼施設」としての側面に対してではなく、「靖国史観の宣伝活動団体」としての側面に対する批判であった。たとえば、仏紙ル・モンド(2005年6月28日付)は「侵略戦争を肯定する靖国神社への小泉首相の参拝が、中国や韓国などのアジア各国から怒りを買っている。靖国神社の戦争観は、アジアや西側の歴史家の誰も受け入れることはできない」と述べ、米紙ニューヨーク・タイムズ(2005年6月22日付)は「靖国神社は、日本のために無罪判決を求める戦争神社である。靖国神社は、軍国主義の過去を再評価しようとする動きの象徴的中心であり、日本と近隣諸国との関係悪化の核心をなしている。靖国史観は、ほとんどのアジア人、米国人にとって受け入れることのできない歴史観である」と述べている。
安倍首相を始めとして、靖国参拝を実行している政治家たちは、上記のような欧米諸国からの靖国参拝批判に対して、「靖国神社は英霊の慰霊・追悼のための施設だから、そこに参拝することには何の問題もない」と弁明するだけである。こんな的外れの弁明では永遠に「誤解を解く」ことは不可能である。またビッテル神父が想定した靖国神社の果たすべき役割の中には、「東京裁判の不当性を暴く」という政治的な主張をする余地は全く存在していなかった。この問題に対して安倍首相がしっかり説明責任を果たそうとしない限り、「誤解を解く」ことができないことは自明である。安倍首相は、そもそも欧米諸国においてなぜ靖国参拝が批判されているのか、ということの根本について理解できていないのではないか。あるいは、それを承知の上で、「あの戦争は間違っていなかった」と強弁しようというのであろうか。(おわり)
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(連載)靖国神社参拝と歴史認識問題(1)
若林 洋介 2013-12-28 21:48
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(連載)靖国神社参拝と歴史認識問題(2)
若林 洋介 2013-12-29 01:31
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