こういったグローバル・インバランスの日本への悪影響を軽減できるのが東アジアでの金融協力である。現在、2国間通貨スワップ協定のネットワークの強化、アジア・ボンド・マーケットの育成が積極的に勧められているが、更に、通貨インデックスの導入や、域内通貨間の為替レート安定化スキームの導入が検討されている。もし、東アジアでの金融協力がすすみアジア・ボンド・マーケットが大きく育てば、ドルに集中している外貨準備の分散先となるだろう。通貨バスケット・インデックスが信任を得、東アジア諸国間の通貨安定化スキームが稼動すれば、東京・上海・シンガポールなどの金融センターで発行される東アジア各国のローカル通貨建てソブリン債や域内通貨バスケット連動債、たとえばADBが試算を始めるというAsian Currency Unite (ACU)と連動したACU連動インデックス債などが、オルタナティヴとして日本の選択肢を広げると考える。さらに、投資・貿易面でも、東アジア域内で通貨安定化のスキームが実現できた場合、東アジア域内での貿易・投資はドルではなく、域内通貨もしくは通貨バスケットで行われるだろうから、貿易・投資の面においても急激なドルの減価の影響を避けることができるだろう。さらには、こういった金融イノベーションのチャンスが、一度は失敗した東京マーケットをロンドンと肩を並べる国際金センターに押し上げる新たなチャンスになるかもしれない。