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2013-06-18 10:02
(連載)日本は米中関係に楔を打つ以外ない(1)
加藤 朗
桜美林大学教授
米中首脳会談で中国の帝国主義的性格が露わになった。それは、次の文言である。「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」。言い換えるなら、現在の空間は不十分だということに他ならない。その背景には帝国主義、植民地主義の人口過剰、資源不足という問題意識があるのだろう。我々日本人は、この空間概念には苦い思い出がある。日本の大陸進出のイデオローグである徳富蘇峰は『大日本膨張論』で「六畳の部屋に二人の同居を要するがごとき窮屈なる国土」と、当時の日本の人口に比して国土が狭いことを理由に大陸への進出は不可避と論じた。その結果が惨憺たる敗戦である。
人口過剰のイデオロギーは日本固有のものではない。後発帝国主義国であったドイツ、イタリアも同じである。アメリカの国際政治学者ハンス・モゲンソーは、これらの国は、「空間に恵まれぬ国民」であり、もし「生活空間」を獲得できなければ「窒息」するほかなく、またもし原料の供給源を獲得できなければ「餓死」するほかない、とのイデオロギーでその膨張政策を正当化し、帝国主義的目標を偽装したと『国際政治』で論じている。日独伊に続くのは中国である。
これまでオバマ政権は中国と北朝鮮の核問題やサイバー戦争などをめぐって外交戦や低強度戦を戦ってきた。すでに米中は戦争状態にある。そのアメリカが首脳会談を中国に呼びかけたことは、中国に休戦を申し入れたに等しい。その意味で今回の首脳会談はアメリカが超大国の座から滑り落ちる分水嶺となった会談として歴史に残るだろう。
なぜアメリカが休戦を望んだのか、最大の理由は経済問題であろう。国防費の大幅な削減で将来的にはかつてのイギリスのように世界から軍事力を引かざるを得なくなる。その時まず間違いなく中東よりもアジアが先だ。今はアジア回帰を標榜しているが、それはこれまで中国が政権交代期に当たり、比較的安定していた中東よりも焦点を当てざるを得なかったからである。(つづく)
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(連載)日本は米中関係に楔を打つ以外ない(1)
加藤 朗 2013-06-18 10:02
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加藤 朗 2013-06-19 12:33
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