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2013-02-28 21:41
国内政治に国民の期待が集中するオバマ政権
川上 高司
拓殖大学教授
オバマ大統領は2013年の一般教書を発表したが、その内容はほとんどが内政に関わることだった。財政赤字の解消、医療制度や税制改革、教育やエネルギー、移民問題そしてアフガニスタンからの撤退、銃規制問題とアメリカが抱える問題を取り上げ、解決を訴えた。その中で、オバマ大統領は各家庭が強くなれば地域の共同体が力を持ちそれらが集約されて究極的にはアメリカという国家が強くなる、だから各家庭や個人の力を高めよう、それが世界に通用する国家の強靱な基盤となると述べていたのが印象に残る。
ピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば、オバマ政権に国民が期待するのは内政問題だと答えた割合は83%、外交に期待する割合はわずか6%だった。ブッシュ政権時代には内政に期待した国民はおおむね50%台だったことに比べると国民の意識が内向きになっていることがはっきりと数値に表れている。では内政では誰に期待するかというと、オバマ大統領の支持率が59%と高めであるのに対して議会への支持率は23%という低さである。これは共和党と民主党が議会でなにかにつけて対立していることにうんざりしている国民の気持ちが見て取れる。今後両党の対立は増えるであろうと考えている国民は66%と、2009年当時が39%だったことに比べると悲観的である。それでも国民の50%は妥協してうまくやってほしいと考えているのである。
だが、党の壁、グレートウォールはそう簡単には崩れないようである。国防長官に指名されたチャック・ヘーゲルの承認投票は共和党の議事妨害にあって2月末まで延期されてしまった。来週にはNATOでアフガニスタンに関する会議があり、アメリカの新しい国防長官はおそらく出席できないという事態に陥っている。実は国民の65%はヘーゲルをよく知らないのであり、共和党が猛烈に反対しても民意を反映していないどころか、共和党は党益のためにヘーゲル承認を阻んでいるとしか国民の目には映らないのである。
そしてヘーゲルの承認難航をみて弱気になって指名辞退に傾いているのがNATOの米軍司令官に指名されているジョン・アレン将軍である。アレン将軍はアフガニスタン司令官の任務を終えて帰国したが、やはり過去のスキャンダル事件を気にして「猛烈なプレッシャーを感じている」とすでに撤退モードなのである。アレン将軍の力量こそがアフガニスタン撤退政策に不可欠であるのに、共和党はまるでアメリカの国益を内側から損ないかねない行動に走っている。オバマ大統領が演説の冒頭付近で「国民のみなさんは党益の前に国益ありき、と考えている。妥協をすべきだと国民のみなさんは我々に期待している。団結してこそ前進できるのです」と党を超えた団結を切々と訴えていた。閣僚承認だけでなく財政問題や税制など共和党との協力は避けて通れない。どう協力をとりつけるか、国内政治に国民の期待が集中するだけに入念な議会対策が求められるだろう。
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