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2012-05-19 09:16
(連載)消費税論議にみる国民の甘え(1)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
消費税の増税問題を巡っては、国民や野党から、その前にまず、「政府が身を削るべきだ」との意見が高まった。そうしたことを背景に、野田政権は、4月3日の閣議で、来年度に新規採用する国家公務員数を政権交代前の2009年度に比べ実に56%削減する方針を決めた。これは行き過ぎである。おそらく、将来、国の国民に対するサービスの提供に関し様々な面で大きな問題が生じることになるであろう。どう考えても、わが国の場合、消費税の大幅な引き上げは不可欠であり、国民はそれを進んで受け入れなければならない。さもないと、将来世代への負担の先送りを含め、国民全体にとって、むしろ大きなマイナスとなるであろう。
国際的には付加価値税(VAT)とされる間接税は、1954年4月、フランスで初めて導入され、その後、世界的に普及し、現在、140カ国以上で採用されている。このように、非常に多数の国で導入されるようになったのは、IMFも推奨してきたということもあるが、基本的には、VATが所得税や法人税よりも、経済成長促進的な税と考えられるからであろう。所得の段階ではなく、消費の段階で課税するため、より貯蓄・投資促進的と考えられるからである。
なお、フランスで始まったVATは、1954年当時、税務当局の幹部であったモーリス・ローレがデザインしたことから、彼は、「VATの父」と言われている、しかし、最初にVATのアイディアを提案したのは、第1次世界大戦終了直後の1910年代末、独シーメンス社の2代目であるヴィルヘルム・フォン・シーメンスだと言われている。
EUでは、VATは加盟の資格要件となっていることから、現加盟の27カ国のすべてがVAT税制を導入している。税率については、EC指令で、標準税率は15%を下回ってはならないと規定されている。ただし、低所得層への配慮等を目的とした軽減税率が認められており、ほとんどすべての国で導入されている。消費税の持つ逆進性の弊害を軽減しようという趣旨である。標準税率は、15%以上であれば各国は自由に税率を決めることができ、域内のVAT税率は、現在、最低の15%(ルクセンブルク、キプロス)から最高の27%(ハンガリー)までのかなり広い範囲に分布している。(つづく)
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山下 英次 2012-05-20 03:11
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