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2012-04-23 19:53
(連載)ロシアは東アジアに何を求めるか明確にせよ(1)
河村 洋
市民政治運動家
2008年の大統領選挙で、サラ・ペイリン元アラスカ州知事がロシアについて認識不足の発言をしたことで厳しく批判された記憶は生々しい。しかし考えてみれば、ロシアがアジア太平洋地域でどのようなビジョンを持っているのかはきわめて不明確である。ペイリン氏は外交政策に疎い『田舎者の政治家』かも知れない。しかし自分の州益に重要であったなら、ペイリン氏もアメリカの国家安全保障に対するロシアの挑戦にもっと鋭敏な問題意識を抱いたであろう。
政策形成者の中には、東アジアの三大国である日米中のパワー・ゲームでロシアが重要な役割を果たすとの声もある。ロシア自身もアジアへの転向を必要としている。今年はウラジオストックでAPEC首脳会議が9月に開催される。また、ロシアにとって今世紀初頭の石油景気から取り残され、開発の遅れた極東と繁栄するヨーロッパの地域格差の是正は重要な国内問題の一つである。ロシアの東アジア転向は、特に中国、朝鮮半島そして日本に対する外交政策に何らかの変化をもたらすだろう。
ロシアのアジア転向は、ともに欧米に対抗するための枢軸を築いてきた中国との間に潜む緊張を刺激しかねない。人口希薄な極東ロシアの住民は、中国という巨大な隣国の存在を快く思っていない。カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのドミトリー・トレニン所長はヨーロッパ改革センターが2月に発行したレポートで、中露関係について「アメリカの覇権に挑戦するという共通の国益はあるものの、両国は同盟関係にはない。モスクワが北京への従属を受け容れることはなく、一方で中国はロシアを衰退しつつある大国と見なしている」と論評している。トレニン氏によるとロシアの外交政策はソ連崩壊によって「ポスト帝国主義」となり、それは帝政からソビエト時代の拡張主義とは全く異なるという。
トレニン氏は「現在のロシアは列強植民地帝国でもなければ超大国でもなく、二番手クラスの勢力として自国の安定を第一に考えている。ロシアはヨーロッパでNATOの圧倒的な通常兵力と対峙し、核戦力によってかろうじて欧米との均衡を保っている。よってロシアにとっては中国と強固な関係を維持することが国益に適う。また、中国にとってもヨーロッパ連合と近い関係にあるリベラルなロシアなどあって欲しくない。ロシアにとっても中国にとっても国際体制でアメリカ支配に挑戦し、グローバル・ガバナンスで自分達の影響力の拡大をはかることが多いに国益に適っている」と述べている。上記の観点から、ロシアは中国の台頭を肯定的にとらえている。アメリカのネオコンサーバティブとは違い、トレニン氏は中露枢軸を体制の性質よりも地政学から見ている。(つづく)
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