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2006-07-21 12:33
北朝鮮ミサイル発射事件の意味するもの
小宮山健二
元教員
叶芳和氏による7月18日付けの投稿を読みましたが、私はほぼすべての論点において同氏と見解を異にします。しかしながら、我が国外交が強力なものであって欲しいとの思いは共有するものであり、その観点から若干の私見を述べることをお許しください。
<問題の本質>
核兵器と運搬手段を開発し、また拉致問題その他の犯罪的行動によって国際社会に脅威を与え続けている北朝鮮を六者協議・二国間協議を通じて問題の解決を図ろうとしてきたが、北朝鮮は米国、日本の対応を不満として話し合いを中断し、事態打開の方策として自ら約束していた凍結を破って、弾道ミサイルの発射を行い新たな緊張を生み出したものである。これに対して今回日本が狙ったのは、北朝鮮の行動が間違っていることを国際社会の明確な意思として発信し、北朝鮮による更なる弾道ミサイル発射を牽制すると共に、外交的解決の道へ復帰するよう圧力をかけることにあった。
こうして見ると平和と安全の維持に最重要な役割を担う国連安全保障理事会が全会一致の決議という形をとって強いメッセージを発出することが出来たことの意味は小さくない。特に、これまでのように日朝共同声明や六カ国協議における了解のみを根拠とするのではなく、今後の北朝鮮の行動を判断する国際社会共通の尺度が出来たことは重要である。憲章第7章への言及や拘束力ある制裁措置に強硬に反対した中国、ロシアにしても、北朝鮮が今後同決議に真っ向から挑戦する行動をとる場合には、今回同様の対応をとることは困難になろう。
因みに、憲章第7章に対する言及ないし拘束力ある制裁措置が入らなかったことを失策ないし外交力の欠如とする見方に関しては、むしろ日本が早い段階からそうした強い態度で、かつ粘り強く臨んだからこそ、当初議長声明ですまそうとしていた中国、ロシアの態度変更をもたらし得たと考える。
<今後の課題>
一方、北朝鮮が今回の国際社会のメッセージを真摯に受け止めて方針を転換するかは楽観できない。国際社会として新たな対応を要する状況が生じた場合に、今回の決議があるからといって中国、ロシアが我が国の立場に同調するかについても当然視することは出来ない。特に、隣接国として北朝鮮内部の変化の直接的影響を受け、また北朝鮮とのパイプの保持が自国の外交的優位性になると考える中国が、日本と異なる立場をとり続けることは十分ありうる。
日本に無い中国の外交力は安保理常任理事国の地位、特に拒否権を有する点である。これは戦後体制がそのまま存続することに起因するものであり、我が国としては引き続きその改革を求めていくべきものではあるが、当面我が国にとっては変えようの無い与件と考えて、このハンディキャップを他の面で一層努力することで乗り越えるしか無い。結局、我が国に敬意をもち、関係強化に意欲を持つ国々を増やす地道な努力と有能な外交要員の養成と国民の強い支持が必要ということになるのではないだろうか。
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