だが、問題の先送りによる解決(といえるかどうかは別にして)、というのは何も目新しい話ではない。それが何でこんなにしこりにしこっているか、といえば、これはお定まりの既得権益、あるいは位置エネルギーが与って力がありそうだ、と思い当たるのには大して想像力を必要としない。例えば全農(というよりも筆者の世代には「農協」と言った方がピンと来る。日本にグループ旅行を定着させた立役者である。)は2万7千人を雇用するそこそこの組織であるのみならず、お仲間内の貯蓄組合のつもりで始めた銀行業務が、貸し出し残高22兆円と侮れない規模に達し、「潰すには大きすぎる(too big to fail)」の典型事例を提供している。お役人同士のなれ合いで、厳しい貸し出し内容審査の対象外にされていることもあって、農政不在の農水省施策のお先棒を担ぎ、近代化だ、機械化だというと、相当ゆるゆるの融資をしていたことは有名だ。そのうち相当部分は不良債権化している、と指摘する人も多い。