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2010-12-05 13:12
(連載)対露政策失敗の責任(4)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
残念ながら、今日に至るまで、ロシア側はこの発言を、日本側のホンネととらえているフシがある。つまり、日本政府は領土問題解決に真剣ではない、あるいは主権問題に鈍感、との見方だ。2003年1月に小泉首相とプーチン大統領がもっぱら経済関係を重視した「日露行動計画」に調印したときも、2009年5月にプーチン首相が来日した際、原子力協定その他盛りだくさんの経済協力合意に調印したときも、ロシア側の解釈は同じであった。つまり、日本の首脳が領土返還を声高に口にするのは、単なる国内(国会)向けのジェスチャーであって、実際には領土問題は棚上げして経済関係を進めることを望んでいる、との解釈である。
そのような誤解を与えたのは、言葉では声高に領土返還を主張し、ロシアを批判しても、行動が伴っていないからだ。いや、行動はむしろ逆向きになっているからだ。民主党政権になって、問題はより深刻になった。メドベージェフ大統領が、APEC首脳会談の直前に北方領土を訪問するというのは、いかにも日本に対して挑発的、あるいは侮辱的である。「ここまで日本はナメられているのか」との印象を世界に与えた。これに対して、日本が怒りや強い不快感を行動で示さなければ、結果的に日本はロシアの行動を「受け入れた」との間違ったシグナルを世界に発することになる。
今年、米国や中国はサミットの場で(4月12日ワシントン、10月29日ハノイ)、日本に対する不快感を示すために、鳩山首相や菅首相との首脳会談を拒否した。これに対して、横浜サミットで日本は、ロシアに対しても、中国に対しても、ひたすら首脳会談を「して頂く」よう、もみ手で対応した。人気急落の菅首相は、対外政策の実質よりも、内政上の観点から、APEC首脳会談を「成功」させたという形式を最優先させたのである。
この状況では、たとえメドベージェフとの首脳会談の場で言葉によって不快感を示しても、これまでと同様、単に国内向けとしか見られない。民主党には、日露や日中関係で国家としての筋を通そうとする閣僚もいる。しかし、首相や官房長官など他の首脳が共同歩調をとらないと、一部閣僚が個人的に浮き上がって、相手国だけでなく国内のマスコミからも非難を浴びることになる。今に至るまで、閣僚がバラバラで、政府が政府の体をなしていない。いや、国家が国家の体をなしていないと言うべきか。暗澹たる気分になっているのは、筆者のみではなかろう。(おわり)
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