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2010-07-16 07:36
紛れもなく「不起訴不当」は、菅に有利
杉浦正章
政治評論家
東京第1検察審査会が「不起訴不当」の烙印を小沢一郎に押したことをめぐって、永田町では小沢に有利か、不利か、の論議が錯綜している。こういうときは、議決の細かい内容に踏み込んで議論しても意味がない。一歩離れて見れば、「首相・菅直人にプラス、小沢にマイナス」が歴然としてくる。選挙惨敗で小沢に陳謝することまで口にした菅だが、9月の代表選に向けて地歩を築きつつある。出先記者の諸君は、7月15日菅が官邸に2時間遅れて着いた理由が分からず、憶測を飛ばしているが、ボディーランゲージを読み取り当てる筆者の能力は、タコのパウロ君にまさるとも劣らない。その「解」は、菅が官邸に着いた瞬間にある。選挙惨敗以来くすんだ顔をしていた菅が、デジタル大画面で見ると元気はつらつだった。「お早うございます」の呼び掛けに、時計を見て、「もう『こんにちは』だ」と珍しく満面笑みで答えた。その後2時間あまりで第1審査会の発表だった。何でここに気がつかないのか。菅は、発表を事前に知ったのだ。それで上機嫌だったのだ。
もちろん公邸で対策を練るのに時間を取られたに違いない。古い話になるが、首相・中曽根康弘は、田中角栄が脳梗塞で倒れた日、一日中、自らの上機嫌を隠さなかったことを思いだす。それほど権力者の存在は首相にとって重圧となっているのだ。16日付全国紙における政界の反応への見方も分かれた。検察審の議決に、毎日が「小沢氏側、起訴相当出ず安堵」と見出しを取り、小沢べったりの参院幹事長・高嶋良充の「小沢前幹事長は、一つの問題を大きくクリアされたものと思う」との談話を基に、甘い見方を展開している。一方で読売は「小沢氏支持議員に衝撃」の見出しで、「小沢氏の政治力の低下は免れない」「親方(小沢氏)が首相になる代表選に出るのは無理だ」などの反応を掲載している。毎日は第1審の不起訴不当の効力から理詰めで説き起こし、読売は太筆で政局から分析している。ここはどうみても読売の記事が優れている。
なぜ菅に有利かだが、小沢にしてみれば、首相・鳩山由紀夫との連快(れんぺい)辞任でクリヤーされたはずの「政治とカネ」がぶり返したことを意味するからだ。現に自民党幹事長・大島理森は参院での証人喚問の協議をする方針を明らかにした。参院での喚問となれば、これまでのように民主党は数を頼みに拒否し続けられない。「政局主戦場」である参院に、また火種が登場したことになる。加えて焦点の第5審査会の議決が、9月か10月になりそうだということもある。2度目の「起訴相当」も予想されるところだが、小沢が9月の代表選に自ら立候補すれば「強制起訴」が予想されるままの立候補となる。参加する地方党員やサポーターからは総スカンを食らうに違いない。だから本人の立候補は困難だ。存在感を示すだけの代理戦争はあり得るが、菅がこれ以上の失敗を繰り返さない限り、海江田万里や原口一博では勝負になるまい。
こうした分析を基にすれば、菅が終始上機嫌である意味が分かるではないか。昨日の投稿内容と重複するが、ここで菅が小沢に陳謝しては、元も子もなくなることを付け加えておく。もっとも国会における説明責任問題は、菅の対応も迫られることになる。証人喚問要求などに菅がどう臨むかによっては、鳩山亜流政権のそしりを受けかねないからだ。したたかな小沢がどんな手を打つかは未知数だが、政治は王道を歩んだ方がいい。永田町の論理で選挙大敗を詫びれば、国民の落胆は極まることになる。
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