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2010-03-26 10:40
米国の東南アジア回帰:増大するASEANへの関心
岡崎研究所
シンクタンク
US-ASEAN Business Council の創立者で、10年間その議長を務め、現在はCSISの東南アジア研究計画部長である Ernest Bower が、米国にとっての ASEAN の重要性を説いています。それによると、ベトナム戦争以来、米国の東南アジア政策はその場その場だけの対応で来たが、オバマ大統領は、自らを「初めての太平洋の米大統領(the first Pacific President)」と呼び、ASEAN 10カ国との首脳会談を始めている、という。
さらに、Bjower は、「米国の ASEAN における投資は、中国における投資の3倍以上、インドにおけるそれの10倍にあたる$153 billion であり、これに石油・ガス関連投資が加われば、額はほぼ倍になる。ASEAN にとって米国は最大の市場であり、米国にとって ASEAN は、NAFTA、EU、日本に次ぐ4番目の市場だ。また、ASEANは、中・豪・日が出す種々の競合する提案の中心にあり、ASEAN 抜きのアジアの地域機構は考えられない。米国は、ベトナム戦争以来の混迷した政策から脱し、ASEAN の客観的政治経済状況に基づく明確な戦略の上に立って、アジア政策を構築しなければ、太平洋国家として地位を損なうことになる。特に、ASEAN政策は、中国とインドの興隆を意識したものでなければならない。植民地時代以来の南アジアと東南アジアの区別はもはや意味がない。インドを入れることは、対中バランスとしてだけでも意味がある」と言っています。
この論説は特に新しいことを言っているわけではありませんが、最近、ASEAN に長年関わってきた人たちが相次いで論壇に登場していることは、米政府の関心が久々に ASEAN に向かいつつあることを示しています。実は ASEAN 自体、米国のベトナム介入の産物です。それまでの東南アジアは、共産系ゲリラが猖獗を極め、同地域の指導者たちは、自分たちの国もいずれ中国、カンボジア、インドネシアの親共枢軸のヘゲモニーの下に共産化する運命にあると諦め、反共を口にすることもできませんでした。しかし、1965年の米国のベトナム介入とインドネシアの9.30共産党クーデターの失敗で、東南アジアは元気を取り戻し、1967年の50万米兵のベトナム投入による安全保障環境とベトナム特需を背景に結成されたのがASEANであり、それが現在に至る東南アジアの安定と繁栄の出発点となりました。当時、米国で花盛りだった東南アジア研究はすっかり衰えて久しくなりますが、その東南アジアが、ほぼ40年ぶりに再び米国の関心の的の一つとして浮上してきたわけです。
その背景には、(1) ASEAN 結成以来の東南アジア諸国の経済的発展、(2) 中国の興隆とそのヘゲモニーが再び東南アジアに及ぶ恐れが出てきたこと、(3)インドネシアにおける比較的民主的で安定したユドヨノ政権の成立、(4)米国と西欧の力の長期的衰退があります。他方、過去半世紀の東南アジアに対する日本の善意、技術、資本の投下は並々ならぬものがあり、ASEAN は本来日本の金城湯池と言ってもよい地域です。ここで、もう一度日本は米国と協力してASEAN 政策を立て直す時期だと言えるでしょう。そのためにも、前に指摘したように、アジアから米国を除外する政策は、軌道修正する必要があるでしょう。
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