昨7月31日、タイ・バンコクで「Thailand Sommelier of the Year 2009」というイベントが催された。その名のとおり、タイで最もすぐれたソムリエを選ぶコンクールである。このコンクールは、タイのワイン専門誌『Wine Today』の創刊者が主催し、フランス政府観光局、フランス食品振興会(SOPEXA)、ボルドー・ワイン委員会(CIVB)といったフランス政府系機関の他、ポメリー社など名高い酒造業者が共催団体として名を連ねた。会場はバンコクのデュシタニ・ホテルであった。昨年に引き続き2回目となった今回のコンクールは、それまでタイでいくつか催されたソムリエ・コンクールとは、別格の規模だという。優勝者は、本年10月に日本で開催される「アジア・オセアニア最優秀ソムリエ・コンクール」にタイ代表として出場することになる。
実のところ、今回、タイがそのようなソムリエ・コンクールを催した背景には、日本や韓国などを大いに意識していたふしがある。「Association de la Sommellerie Internationale (ASI)」という権威あるソムリエの国際組織があるが、世界44カ国の加盟団体のうち、アジアからは日本と韓国と香港のみが加盟している。とどのつまり、タイのワイン業界は「日本人や韓国人にできて、タイ人にできないわけがない」と言わんばかりに、ASIへの加盟を実現すべく、真摯な努力を重ねているのである。「ワイン文化」の普及は、国内のワイン市場の拡大によってもたらされる経済的効果もさることながら、市民社会が成熟した証として絶妙の宣伝効果を持つ。たかがワイン、されどワイン、である。国家の発展は意外なところにその兆候を見せるのだ。それにしても、かりに将来、「世界最優秀ソムリエ」がタイから出たとしたら、さぞかし愉快ではあるまいか。