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2009-07-16 20:28
罪万死に値する「八方美人」の社説
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
新聞の社説というのは、どこからも文句の出様のない正論、あるいは八方美人の議論を展開し、正義の使者然とした論調が目立つ。それかあらぬか、社説などには、よくよくの好き者でなければ目を通さないようだから、まあ、それはそれでよいのかもしれない。しかし、通り一遍の常識論のように見えて、実はとんでもない食わせ物の議論があった場合、それを裏書きするかのような社説が登場すると、これは筆者の無知を嗤っているだけではすまない。「何とはなく」形成される誤った空気の後押しをすることになるからだ。
7月5日付けの朝日新聞社説「公益法人改革は規制の強化より透明性」(朝刊3面)はまさにその典型である。先ず第一に羊頭狗肉も甚だしいのは、「漢検協会からは主務官庁の文部科学省が毎年、事業報告書の提出を受けていた。立ち入り検査もしていたのに、巨額の業務委託といった不明朗な運営をチェックできなかった。新設の第三者委員会には財務や会計の専門家もそろう。目を凝らしてほしい」、「会計監査人を(中略)置かなくてもいいという例外の範囲が広くなった(中略)背景には、政治家の圧力があったのではないかと疑う声もある。見直す必要があるのではないか」といっておいて、その直後に「不祥事が起きたからといって、官庁の監督権限や規制を強めればいいというわけではない」とくる。あたりさわりのない両論併記も、ここまでくると噴飯ものに近い。が、それはまだ罪が軽い。
この社説の最大の罪は、「改革の狙いは、民間の公益活動を盛んにし、活気ある社会をつくることだ。政府は制度をよりその目的に沿ったものにしていくとともに、公益法人側の自律を期待してほしい」と平然と言ってのけるところにある。今度の新制度が「民間公益活動を盛んにする」という美名の下に、どれほど官僚の恣意的裁量を強化し、繁文縟礼耐えられないほどの手続きを要求し、かつ公益認定に当たって、愚劣としか言いようのない条件を課しているか、この筆者はご存知の上でお書きになっているのだろうか。
この社説の書き出しが、過去公益法人の不祥事からであるのが象徴的なように、公益法人・外郭団体・不祥事・ダーティーイメージというのは、ステレオタイプだ。それを良いことに、悪いことをしようにも出来ないという、かつての治安維持法の予防拘束のような規定が、新制度に充満しているのを気づかぬままこの社説をお書きになっているのだろうか。それならまだ救いはある。単なる不勉強、無知故だからだ。ところが、ご存知の上で、あるいは官僚からレクを受けた上で、お得意の「あっちももっとも、こちらももっとも」という両論併記でお書きになったとすれば、これは罪万死に値するというべきであろう。
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