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2009-04-28 10:02
(連載)日本 戦後最大の衰退期に陥る(2)
関山 健
東京財団研究員
金融危機震源地の米国や欧州などは、統計データを見る限り、経済の落ち込みは日本ほど深刻でないようである。日本の経済収縮は、欧米のレベルを超えていると言うことができるのか?2008年第4四半期の実質GDP年率成長率は、米国が3.8%減と27年ぶりの低水準、欧州も1999年のユーロ圏設立以来最悪の5.7%減であった。しかし、日本の12.7%減という落ち込みは、米欧をはるかに上回っており、現時点において日本は、欧米を更に上回る速度で経済収縮が進んでいると言わざるをえない。
近年の日本経済は、アメリカや欧州を最終市場とする輸出に大きく依存していた。しかし、そのアメリカと欧州の双方が同時に景気後退に見舞われた結果、欧米向けの輸出減少はもちろん、同様に欧米向け輸出を前提とした中国・アジア向けの輸出も減少し、さらに輸出減少によって国内企業も大幅な減産に見舞われた。域内・国内の需要主導で成長してきた欧米以上に、日本の景気後退が深刻なのは、日本が近年欧米を最終市場する輸出に大きく依存していた反動なのである。
2008年第4四半期の実質GDP内訳では、輸出は13.9%減となり、その減少幅は1975年第1四半期の9.7%減を上回り、過去最大であった。輸出から輸入を差し引いた外需は、成長率を3.0%分押し下げ、戦後最大級の落ち込みであった。輸出の減少により大規模な減産を余儀なくされた国内企業は設備投資を減少させ、2008年第4四半期の設備投資は5.3%減となった。さらに、国内企業の不調により雇用情勢が悪化した結果、消費者心理が一段と冷え込み、自動車などの高額品を中心に買い控えの動きが広がった。2008年第4四半期の個人消費は0・4%減と、2期ぶりのマイナスとなった。
他の先進国と比較して、日本経済には強みも弱みもあろうが、日本経済が比較的脆弱な点はどこか?日本経済の弱点といえば、資源エネルギーが国内に乏しく、輸入に頼らざるをえないことである。さらに近年においては、経済成長の輸出依存度が高いことも問題である。2006年のデータによれば、日本の輸出依存度は14.8%で、これを下回る主要国はアメリカの7.9%だけであり、G7平均の22%や中国の36.6%よりも低位にある。しかし、日本は名目GDPが殆ど増えない中で輸出依存度が上昇している一方、他の国々はGDPが安定的に増えつつ輸出がそれを上回って伸びる形で依存度が上がっている。すなわち、日本経済全体の外需依存は決して高くないものの、個人消費などの内需が伸び悩む中、輸出増で辛うじて経済成長している状態が続いていたのである。近年の日本経済にとっては、資源エネルギーと需要という二つの不足を国内に抱え、それを海外に依存しなければならないことが弱点であると言えよう。(つづく)
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