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2008-11-06 09:42
拉致を許して独立国家とは言えない
花岡 信昭
ジャーナリスト
米政府のテロ支援国指定解除は、ほとんど確実視されていた。8月の発効期限から2カ月遅れただけにすぎない。これを日本への配慮の結果、と見るのは勝手だが、日本の拉致問題は当初から「枠外」だったのではないか。政府・外交当局はそのことを知っていたはずである。指定解除は時間の問題だった。これを懸命の外交努力、政治力によって引っくり返したのなら、これは日本の「底力」として評価できるのだが、そういう展開にはならなかった。政治の責任がそこにある。拉致問題がある以上指定解除はあり得ない、という誤ったメッセージを国民に与えてしまったのではないか。実態はそうではなかった。6者協議でも日本以外の国の関心は「核・ミサイル」である。拉致については、口では同情や遺憾の意を示しながら、「拉致問題は日朝間で解決してくれ」というのが本音だった。
政治は、その事実を率直に語らなくてはいけない。だが、指定解除と拉致問題の関係を、国民に分かるように説明してこなかったのである。国民をごまかし続け、指定解除となったとたんに態度を変える。これでは政治への信頼は生まれない。手っ取り早く言ってしまえば、日本以外の国にとって、拉致は喫緊の最重要課題ではないのだ。「核・ミサイル」封じ込めこそが優先されるべき問題だった。であるならば、日本は独自の立場から、拉致問題に向き合わなくてはならない。工作員が潜入し、何の罪もない日本人を大量に拉致した。それも国家が指揮した国家犯罪である。主権侵害はいうまでもない。これを許してしまっては、独立国家とはいえない。本来なら、特殊部隊を送り込んで奪還作戦を展開するぐらいのことをやるのが、国家の使命である。日本はその選択肢を最初から放棄している。
国民の生命財産を守るという至高の国家の責務を果たせないままなのだ。拉致問題は家族会などが強調するように、「いまなお進行しているテロ」である。北朝鮮は「再調査」を約束しながら、調査委員会も設置していない。麻生首相は参院予算委員会の答弁で、米政府に対する不快感を表明した。指定解除が伝えられた当初の対応とはやや違いが見られる。政治の混乱期にあるとはいえ、指定解除の場合の政府方針が定まっていなかったということか。「兵を出す」という選択が封じられているのであれば、何ができるか。日本独自の制裁を強化していく以外にない。エネルギー支援などで各国と歩調を合わせるようなぶざまなことはしてほしくない。拉致問題は国家とは何かという根源的な課題を突きつけているのである。
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