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2008-11-04 15:39
米新大統領の対日・対アジア政策如何?
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
マケインが、オバマは徴収された税金から受ける恩恵を広く皆で分かち合おう(spread)、あるいは再配分(redistribute)しようとしていると攻撃し、これは社会主義者だ、とペイリンはいう。所得税最高税率の引き下げは「金持ち優遇」で、一律消費税は「貧者に厳しい」税制度だ、という空気が支配的なわが国とは正反対と言っても良い議論だ。リベラルな人、あるいはリベラルな考え方、というのが日本では肯定的な意味合いを持つのに、米国ではどちらかというとネガティブに、対立候補をおとしめる語法として使われるのとならんで、両国の国民の持つ意識とかパーセプションの違いを浮き彫りにする選挙戦ではあった。
史上初の黒人候補ということもあって、大統領選を巡るニュースの主要テーマの一つが人種問題であった。はたして人種問題は投票行動に影響を持つのか、ということだが、ほとんどの世論調査では「それはない」ということになっている。タテマエとホンネというのは何も日本に限ったことではない。現実に投票するときに世論調査の回答時とは異なった行動をとる、という可能性は決して低くはない、という意見もある。
その選挙戦もあますところわずかとなった。下馬評ではオバマ有利との観測が圧倒的、それも地滑り的勝利を予言する向きもある。しかし1982年カリフォルニア州知事選挙でやはり黒人候補が圧倒的優勢を予想されながら、ふたを開けてみたら僅差で敗れた、というのが前例にある(所謂ブラッドリー現象)から、なんともいえない、という人もいる。それより、公然と議論されている気配はないが、遠く日本にいてケネディ兄弟やキング牧師に起こった事件を想起すると、投票前、あるいは就任後に、まさか再び悪夢が襲うことはないか、という方が懸念されたりする。とにかく日本でいえば、刃渡り何センチかの刃物を振り回す話が、いきなりライフルだ、ピストルだということになるお国柄だから。
それよりも、われわれにとって一番関心のある対日あるいは対アジア政策はどうか。残念ながら少なくとも大統領選の争点には全くなっていない。おそらく当分は、金融市場を中心とした財政支出と対策に追われて、それどころではない、という日々であろう。その意味では、新機軸が打ち出される理由も特には見当たらない。しかし逆に言えば、ASEANあるいは日本を中心とした新しい動きを積極的に阻止しようとする、かつてのような態度を示すこともないのかもしれない。とすれば、日本のアジア政策にとっては悪いニュースではない。
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