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2008-10-27 09:48
米朝合意をどう見るか
武貞 秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
10月上旬、6か国協議の米国代表、ヒル国務次官補が北朝鮮を訪問し、検証に関して北朝鮮の合意をとりつけた。米国は北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除し、北朝鮮は寧辺の核施設の無能力化作業を再開した。このプロセスをどうとらえるかが、日本と米国で論議を呼んだ。日本では「米国の姿勢の大きな転換」という見方が多いけれども、むしろ米国の政策が一貫したものである、ことを示した合意ではなかったか。
2007年1月、米国はそれまで拒否していた北朝鮮との2国間協議に応じて、ベルリンで協議を持った。それ以降、米国の姿勢は一貫している。米国は核実験をした北朝鮮に、「核抑止力」放棄の圧力を増すことをしていない。核実験をしてしまった国に対して、核を手放させるための圧力には限界があることは、インドやパキスタンの例から明らかだ。ウラン濃縮計画、核拡散の実態を解明するために、6か国協議の決裂を覚悟するには、米国の国内政治の関心はあまりにも遠いところにありすぎる。ブッシュ政権は金融危機のときに、国際政治の分野で賭けに出るわけにもいかない。それに、ウラン濃縮と核拡散の解明に関しては、日米中韓ロの違いがありすぎる。IAEAや中国に任せるより、米国が主導して、ひとまずは、実態が明らかであるヨンビョンの核施設の無能力化を優先するという姿勢は、この2年間米国が一貫して追求してきた政策である。
ただ、米国のこの姿勢は、「北朝鮮の核開発計画は、生存のための保障を得るための手段」という見方を前提にしたものだ。北朝鮮は、「生存の保障」「体制の保証」を求めるとき、米朝不可侵宣言、在韓米軍撤退、そして北朝鮮主導の統一が実現して、初めて「生存のための保障」が得られる、という意味を込めて主張してきた。これは、「統一のために核を持つ」という戦略が北朝鮮にあることを意味する。「生存の保障」の本当の意味を米国の政策決定者が知ったとき、米国の政策はどう変わるのだろうか。
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