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2008-09-01 22:00
留学生30万人計画について
安江則子
大学
中国からの留学生の傾向に大きな変化を感じている。かつて社会科学の分野では、日本で学ぶべきことは経済学や経営のノウハウだと考え、政治学には興味を示さない学生がほとんどであったが、最近は国際政治や国際関係を学ぼうという学生も増えてきた。例えば、米中関係をテーマに研究するという若い留学生にも出会った。ただし、国際政治イコール勢力均衡だという単純な理解が抜けきらない学生もおり、特に抽象度の高い国際政治理論の研究は苦手なようだ。大学の学部時代から外国に留学すると、中央政府のいわゆるエリート官僚に登用されないので、彼らはさらに米国に留学して研究者を目指すなど、自分で道を切り開かなければならないという。経済格差や環境など多くの課題を抱える中国だが、何も言わなくても留学生は自分の国を客観的に見ることを覚える。こうした学生の存在は、中国の将来や日中関係にプラスとなろう。
日本では、現在約10万人の留学生を、30万人まで増やそうという計画があるが、数の増加だけを目標とするのではなく、目的意識をもった質の高い留学生が、日本の大学で学ぶことを選択するようになってほしい。日本政府の支援する大学院のJDS留学生は、英語だけを使用し、修了する学生の他に、日本語で学ぶ学生も受け入れていたが、しだいに英語学生に限定する方向になってきている。日本語で学ぶ留学生は、日本社会との交流の機会も多く、日本のメディアから情報を得ることができるので、こうした方向性には疑問もある。
大学内部では留学生の増加に否定的な立場も根強いが、グローバル化時代に適応できる人材の育成を考えると、日本人学生に対する教学上の理由で留学生を制限する理由はない。日本の学生は、情報量に恵まれた環境にいながら、国際情勢に対する関心は一般的に低く、隣国のダイナミックな変化が自分たちの将来にどういう影響をもつのか真剣に考えてはいない。オリンピックやサッカー以上に、日本の国連安保理の常任理事国入りの議論に関心をもつ学生が少ないのは、不思議なことだと常々思っている。中国や他のアジアからの留学生が自国のことを熱心に語るのと対照的である。キャンパスは、様々な国籍の若者の自由な交流と自己啓発の場として活かされていくべきであろう。
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