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2008-06-25 14:28
温暖化対策の前提として求められる世界経済の安定
古川元久
衆議院議員
先日マレーシアのクアラルンプールで開催された世界経済フォーラム東アジア会議に出席してきました。全体の印象をひと言でいえば、世界経済は減速の度合いを強めており、これまで強いと思われてきたアジア諸国も軒並み経済が急速に落ち込みつつある、というところでしょうか。1月にダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会では、「アメリカ経済が落ち込んでも、中国、インドをはじめとするアジアなどの新興国の経済は底堅い」という、いわゆる“デカップリング(非連動)論”が、かなり幅を利かせていました。
ところがいまやそうした議論が、実は“幻想だった”といわざるをえないような状況に、アジアの諸国は陥っています。その典型が、アジアの中の経済成長の優等生だったベトナムです。ベトナムは急激なインフレと株価の急落に見舞われ、いくら「ベトナムの潜在力は大きい」と皆が声高に叫んでも、不安は隠せません。サブプライム問題に端を発した混乱は、マネーが証券から現物であるエネルギーや食糧に流れ込むことで、ますますエネルギーや食糧価格の高騰に拍車をかけ、それがインフレを引き起こして、アジア諸国の経済の足を引っ張るという、悪循環が起きているのです。
あまりのエネルギー・食糧価格の高騰により、発展途上国の生活環境は急激に悪化しています。各地でガソリン価格高騰に抗議するデモや食糧を求める暴動などが起きています。こうした状況の中では、目前の影響が明確でない地球温暖化のような危機に対する対応より、いま目の前にあるエネルギー危機や食糧危機に、人々の関心は集中しつつあります。マレーシアでは米増産のためにスマトラ島の泥炭地の森を開墾して、水田にすることまで、検討しているそうです。これは温暖化防止の観点からは大問題です。しかし、こうした途上国の行動を私たち先進国が批判できるでしょうか。いまの途上国はCO2排出量の増加に構っていられないくらい、日々の生活が追い詰められた状況に陥りつつあるのです。温暖化への関心の高まりが、エネルギー・食糧価格の高騰を招いた側面がありますが、皮肉にもそれが逆に途上国の温暖化問題への関心を弱める結果を引き起こしてしまっているのです。
当面、世界的に経済はますます不安定の度合いを増しそうな気配です。そしてそれは温暖化対策が進展しにくくなることを意味しています。これまでかなりの長期にわたり、世界経済全体が成長を続けるという、きわめて異例な状態が続きました。それを考えると現在の状況は、起こるべくして起きたともいえます。「環境と経済の両立」ということが、これまでも言われてきましたが、経済の下降局面では、これはますます難しくなります。いまアジア諸国で起きつつある状況を見ると、やはり環境に配慮する前提として、経済の安定が必要なようです。
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