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2008-06-07 08:33
日中韓安全保障対話の可能性
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
北東アジアでは、様々な多国間の対話,政策協議が行われてきた。金泳三政権のときの南北朝鮮と米国、中国の4カ国協議、金大中政権まで続いた日本、韓国、米国の政策調整の枠組み(TCOG)、2003年4月の中国、米国、北朝鮮の3者協議、同年8月に始まった北朝鮮核問題解決のための6か国協議、欧州の信頼醸成促進のヘルシンキ・プロセスに学んだ北東アジア安全保障多国間対話(昨年、済州島で開催されたときは、チェジュ・プロセスという言葉が使用された)がある。日本、韓国、中国の対話の枠組みは、ASEAN+3(日中韓)として始まり、昨年11月には、第8回日中韓首脳会議が開催された。
経済・貿易、ICT産業、環境保護、人材育成及び文化の5つの分野とエネルギー安全保障などにおいて、日中韓がどう協力できるかが、真剣に話し合われた。これまで、日中韓の組み合わせでは、50以上の経済、エネルギー、通商分野での協力関係を考える枠組みと実務者の3か国協議が開催されてきている。ただし、それは、経済分野が中心であった。では、日中韓の安全保障対話は可能だろうか。逆説的であるが、同盟関係を含んでいないので、かえって(軍事の微妙な問題を抜きにして)本音を語れる枠組みが可能になるかもしれない。「日米韓」はその中に2つの同盟を含み、「日米中」は日米という同盟を含む。「日米豪」や「日米印」もその中に同盟を含み、正三角形というわけにはいかない。「中ロ朝」は、1961年の中朝友好協力相互援助条約を含んでいる。
5月26日からの2日間、韓国済州島で、日本国際問題研究所、韓国外交安保研究院、中国国際問題研究所が共同主催する「第1回日中韓3か国対話」が開かれた。各国の外交担当者も出席するトラック1・5の会議である。FTA問題、歴史問題、経済の相互補完性などのほか、地震などの災害時の救難に際しての連携、大量破壊兵器の拡散防止、北朝鮮核問題解決のロードマップ作り、歴史問題などが話し合われた。とくに、四川大地震の直後でもあり、北東アジアにおける地震などの災害のとき、日中韓の3か国が救助のための各国軍や自衛隊間の協力を行なう可能性を議論した。
とくに、国内法、各国の国内世論などを検討することの重要性が指摘されたのは意義あることだった。自衛隊の輸送機を中国に派遣する話がでる2日前の会議である。印象深かったのは、中国の外交専門家が「災害時の軍同士の救助支援について、日中韓で話し合っておくことは検討に値する」と話したことである。人道主義に立った軍と自衛隊の協力可能性をシンクタンクが議論する時代がやってきたのである。時代は変わり、また中国が変わりつつあることを痛感した2日間だった。これから、「日中韓」「安全保障分野」「人道的支援」は、北東アジアにおいて、重要な課題になるだろう。
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