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2008-06-03 09:49
不可解な日本国内の対北朝鮮融和の動き
鈴木馨祐
衆議院議員
北朝鮮をめぐって日本の政界の最近の動きが妙だ。経済制裁解除、国交正常化を目指す動きがあるという。拉致や核、ミサイルといった諸懸案が動かないから事態打開のためということのようだが、韓国がすでに失敗した太陽政策という好例があるにもかかわらず、同じ徹を踏もうというのだろうか。そもそも、核にしてもミサイルにしても拉致にしても、金正日、北朝鮮、彼らがそれを自分から解決したいと思うことがありえないのは、これまでの行動を分析してみれば明白だ。その進展を得るためには、彼らをして解決に動かざるを得ないような状況に、我々が追い込んでいくより他ないのだ。
北朝鮮に譲歩を重ねているヒル氏がアメリカの担当者となって以降、確かに六カ国協議は「進展」している。しかし、拉致や核、ミサイルという問題が実質的に少しでも進んだかといえば、全く進んでいない。北朝鮮が身を切ったかといえば、切っていないのだ。寧辺の施設にしても、実際に北朝鮮の核開発にとって致命的に重要かといえば、疑問が残るし、すでに所有しているはずの核弾頭、濃縮ウラン計画、すべて手付かずで野放しにしている。六者協議の枠組みを守るための「言葉遊び」の交渉であって、北朝鮮の核問題、拉致問題、ミサイル問題の解決に向けた交渉とはなっていない、のが残念ながら現状だ。
本来、金正日にとって自らの安全を保障する核を放棄し、拉致を認めてまで、守りたいものにまで手を突っ込まなければ、問題の解決はありえない。もちろん追い詰めすぎて、自暴自棄という事態も避けねばならないが、追い詰めずに何も引き出せない、という事態も回避しなければならない。そのことを考えれば、圧力なしに対話はありえないし、「解決」のありようはずがない、ことは明白だろう。そして、北朝鮮にとっての「圧力」とは何かを考えれば、日本の経済的なものと同時に、アメリカの金融、軍事、経済的なものが、死活的に重要なことは明白だ。中国が原油の供給や経済的な支援を断ち切るということまでできないことは、金正日自身がわかっていることだから、結局のところ事態を動かしうるのは、日米が連携して戦略的に北朝鮮に対峙していくより他ないのだ。
そして忘れてはならない。北朝鮮の核もミサイルも拉致も、アメリカは被害者でも、脅威にさらされているわけでもないのだ。当事国は日本なのである。したがってアメリカにとって、日本以上に強硬である根拠は存在しない。ワシントンの感覚としては、北朝鮮は「脅威」ではなく、「奇妙な国」なのであって、同盟国日本が脅威にさらされているからこそ「気にしている」のだ、ということも覚えておかねばならない。そんな位置づけであるにもかかわらず、核、ミサイル、拉致、何一つとして、1ミリも実質的に進展していない中で、日本国内で北朝鮮への制裁解除、国交正常化の動き、「資源開発のバスに乗り遅れるな」という動きが与党から出てきて、しかも福田総理がそれを黙認している、というメッセージが発せられようとしている。
アメリカは、日本が軟化するならば、北朝鮮問題では一気に融和に動くだろう。中東問題を考えれば、他の地域はとりあえずでも安定していることが大事なのだから。なにせアメリカ自身にとっては、朝鮮半島は、今や大して重要な問題ではないのだ。結果として「アメリカの圧力」がなくなれば、もはや北朝鮮としては、拉致、核、ミサイルの問題で譲歩する必要性は全くなくなる。日本は永遠に北朝鮮の脅威におびえて生きていかなくてはならない。これは北朝鮮の直接的な脅威に唯一さらされている日本にとっては由々しき事態なのではないだろうか。なぜ日本の政界の中でそのような流れを作ろうとする勢力がいるのか、日本の長期的な国益や安全を考えたとき、私としては全く理解できない。
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