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2008-03-19 11:40
中国産「汚染餃子」事件と国際分業の隘路
櫻田 淳
東洋学園大学准教授
中国産「冷凍餃子」に農薬が混入されていた一件は、それを食した家族が健康被害を受けるという具体的な事実の故に、日本国内では大きな衝撃とともに受止められた。中国政府が、この一件の実態解明に熱意を示しているのも、事件による対外印象の悪さを憂慮してのことである。
中国産「汚染餃子」の一件は、現在の国際情勢が抱える難題の一端を示している。「グローバリゼーション」の趨勢は、「相互依存」の進展と半ば同義のように語られてきたけれども、この一件は、「グローバリゼーション」の趨勢の中で「何をどこまで依存するか」ということの見極めが、日本の人々に要請されるようになっていることを示唆しているのである。普段、人々が口にする餃子作りまでも中国に依存したのは、餃子生産に際しての人件費の安さを考慮した経済的合理性の故であった。しかし、冷凍技術に依存したものとはいえ、こうした中国への依存の有り様が果たして適切であったのかは、冷静に考える必要があるであろう。現下の中国の経済発展は、「人件費の安さ」における優位性を減らす方向に働くであろうけれども、そのような場合に、「人件費の安さ」だけを顧慮して他国に移るという仕方には、自ずから限界があろうからである。
現在、日本国内には、「中国産品は何でも怪しい」という雰囲気がある。こうした雰囲気を和らげる第一の責任が、中国政府・産業界の努力にあるのは、あらためて指摘するまでもない。ただし、日本における中国産品への懸念が「中貨排斥」という感情にまで高まるとすれば、その非生産性は推して知るべしであろう。「何をどこまで依存するか」ということの見極めは、こうした非生産性の陥穽に落ちないためにも、大事な作法であるといえよう。
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