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2008-03-12 10:32
GHG排出量の削減にはアジア地域として取り組め
武石礼司
東京国際大学教授
7月の洞爺湖サミットにおける地球環境問題に関する議論の動向が、たいへん注目されている。また、2013年以降の、京都議定書で設定された第一約束期間後の「ポスト京都」の取り決めをどのようにするかも大きな議論を呼んでいる。2008年から2012年の第一約束期間において、日本が極めて厳しい6%削減という義務を負った一方、米国は議定書から離脱し、また、中国、インドを始めとする発展途上にある諸国は削減義務を負っていない。しかも、日本を始めとした削減義務を負った国が、排出削減の未達成部分を補おうと、クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトを、途上国で探しまわるという状況となっている。明らかに、日本に対する過大な義務が設定されてしまっているのが現状である。
筆者も経験したが、欧州で開催された会議で、京都議定書において、日本が余りに不平等なポジションに置かれていることを説明すると、また苛立っている日本人(irritated Japanese)の発言があったと、むしろ欧米からの出席者が、日本に同情する発言をしてくれるほどである。排出削減の限界費用が極端に高い日本が、どれだけ排出を削減できるかを一国の中だけで悶々とするのは正しくない。地球環境問題への取り組みのそもそもの目的である「地球全体での温室効果ガス(GHG)排出量の削減」に、如何にしたら最も貢献できるかとの視点からの取り組みこそが必要である。
OECDの国際エネルギー機関(IEA)の見通し(2007年版)でも、中国のCO2排出量は、現在の60億トンが、2030年には90億トンから140億トンの間に達すると予測されている。一方、日本は2030年で12億トン前後と横ばいのままであり、環境配慮の施策を導入することによって2億トン程度の削減が可能かもしれないと予測されている。隣国である日本と中国の削減可能な量と、削減のためのコストが明らかに異なり、日本で1単位削減する費用で、中国では何倍もの削減可能性が存在している。
こうした状況がある以上、取り組むべきなのは、日本、中国、韓国、さらにアセアン諸国も含めた形で、アジア地域全体としてのGHG排出量の削減を目指すことである。まずは分野別の原単位目標の導入が行われるべきであり、アジア全体の総量目標が設定できればなお良い。目標が設定される中、日本が排出権取引を導入することは、アジアでの排出権取引の先駆者として、CDM等により国外で得られた権利を国内でも流通させながら、新たなビジネスの芽を育てることにつながる。アジア地域全体としても、GHG削減に取り組むことで、技術力の向上と産業の高度化が進み、産業間の自由な競争が促進され、市場規模が拡大する。環境への取り組みを積極化させることで、アジア各国の所得の向上を通じたアジア全体のいっそうの発展と活性化という成果が、確実に得られる状況が出現していると言うことができる。
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