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2008-01-08 20:16
ラッド豪新政権と日豪関係への期待
石原雄介
大学院生
昨年11月24日の豪州下院選挙の結果が豪労働党の圧勝に終わったことを受けて、同党党首ケヴィン・ラッド氏はさる12月3日、第26代豪首相に正式に就任した。「日本は豪州にとってアジアでもっとも重要な国」と公言してはばからなったハワード前首相から、長年対中外交に携わり中国語を流暢に話すラッド氏に政権が移行したことで、新政権はより「親中」、裏返せば対日関係を軽視したアジア外交を行うのでは、との懸念の声がわが国でも一部で聞かれる。しかし、本当にそうだろうか。
豪州労働党が伝統的にアジア重視の立場であることには定評がある。90年代のボブ・ホーク、それに続くポール・キーティング労働党政権は、アジア・太平洋地域における多国間枠組みの構築・発展と、アジア諸国との二国間関係の発展とを両眼的に進める外交政策を展開した。ラッド氏個人も、外交官としてアジア畑(特に中国)を歩んだことから、「アジア派」であるとされる。他方、ラッド氏はハワード前政権の外交的成果の一つである良好な対米関係も同時に継承する姿勢をみせている。こうした対米関係ならびにアジアを同時に重視する立場は、わが国の外交政策と基本的に軌を一にしている。
また、ラッド新政権の外交方針は、ハワード前政権の東アジア外交がはらんでいた問題点を克服する可能性をも秘めている。ハワード前政権はもっぱら「プラグマティックな外交」といわれる成果の見えやすい外交課題に取り組んできており、「東アジア共同体」構想などの長期的かつ価値的な政策課題には極めて消極的な態度をとった。この点、ラッド新政権および労働党の伝統的外交政策は、日豪関係を、単なる二国間関係の深化および米国のハブ・アンド・スポークスのネットワーク化という文脈を超えて、「東アジア共同体」構想と有機的に関連づける可能性を秘めている。
以上のことから、ラッド新政権の発足は、むしろ、ハワード前政権終盤に進展した日豪戦略的パートナーシップを、わが国のアジア政策の柱の一つである「東アジア共同体」構築と有機的に結合させる好機だといえるのではないか。本年早々には日本の首相が豪州を訪問し、両国間の戦略的パートナーシップをさらに深化させる予定である。福田首相とラッド新首相の「共鳴」に期待したい。
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