ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2007-10-19 21:24
東アジア共同体と東アジア経済協力機構の重層的構造をめざせ
中曽根康弘
東アジア共同体評議会会長、元内閣総理大臣
東アジア共同体という事が言われております。東アジア共同体は、ASEANの10カ国と、北の3カ国、つまり13カ国が基礎単位になっています。今まで言われてきたのはそうです。だから小泉首相も当時国連に行って、東アジア共同体に賛成だと演説してきている。中国は、前から東アジア共同体を言っておるし、ASEANも賛成なのです。東アジア共同体という言葉にはみな賛成している。だけど中身はどうだという事になると、それはまだ全然ない訳です。しかし、東アジア共同体というものをつくっていくという事は、各国が共通の理想を持つという点において、非常に重大な点であります。そしてそれをつくりあげていく為に、お互いがいつも話し合い、協力しあって、どうしようかと相談しあうという、その過程がこれからも非常に大事な点なのです。
しかし、それだけではありません。私は、もう一つ要ると言っているのです。それが何であるかといえば、オーストラリア、ニュージーランド、インド、アメリカを入れよ、ということです。そして13プラス4で、17カ国の東アジア経済協力機構をつくりなさいと言っている。アメリカを何故入れるかというと、アメリカはアジアではないと言われるかもしれませんが、オーストラリアもアジアではありません。東アジアの安全というのがどうして出来ているかといえば、アメリカとの軍事同盟で出来ているわけです。日米安全保障条約、米韓条約、米タイ条約、米比条約、それからオーストラリア、ニュージーランドとの同盟条約、シンガポールとアメリカとの特殊関係です。そういう訳で、東アジアの国々の安全は、アメリカとの同盟条約網というものが太平洋の海の底に埋設されて、保障されているのであります。それで経済も安定してきている訳なのです。だいたい経済協力にしても、経済共同体にしても、安全保障が基礎になければ出来ません。ヨーロッパのEUが何故出来ているかといえば、NATOがあるからであります。北大西洋同盟条約というのがあるから、その上にEUがあり、昔のECがあった訳です。
中国との将来を考え、あるいはアメリカとの関係を考え、いろいろな面を考えてみると、東アジア共同体というのは13カ国でしっかりとやる、しかし文化が違い、言語が違い、距離が離れているから、そんなに簡単にいくものではないけれど、そういう目標を持つという事が大事なのです。それから東アジア経済協力機構という場合には、経済は主権を突破してどんどん進んでいきますから、だから何も国籍とか国家を考える必要はない。しかし、安全保障という基盤を無視できない。だから東アジア経済協力機構にはアメリカも入れたほうがよいと、私は言っておる。そういう重層的構造で東アジアの将来性を考える。これは十年かかるか、二十年かかるか分りませんけれど、少なくともそういう理念を持って、アジアの国々にも話しかけ、まあ日本がそういうチャンスを色々つくっていくということが、日本人がアジア人として生きていく、これからの一つの大きなメルクマークになると思います。日本国民の子孫にたいしても、我々はこういう理想を持ってやっているんだよ、お前達も引き継いでやらないかと、そういうスケールの大きい国際的な、世界的な意味のある事を、日本人が持ってなければ、国家として存在する意味もないと、私は思っておる訳であります。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会