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2007-10-05 18:41
朝鮮半島をめぐるパラダイム・シフトと日本の対応
河東哲夫
Japan-World Trends代表
今から10年前ボストンにいた時、韓国のある国際問題専門家が僕のところに意見交換にやってきた。日本が朝鮮半島の情勢をどのように見ているかというのである。当時はさしたる動きもなかったのだが、僕はあえて変わったことを言ってやろうと思って、その頃考えていたことを言った。「朝鮮半島が将来もし統一されることになれば、米軍が韓国に駐留を続けることは難しくなるでしょう。そして米国の軍事的プレゼンスがなくなった韓国は、中国寄りの立場を取ることになるかもしれない。日本が米中の間にもろに挟まれてしまうことになります」と。先方は「そこまで考えているのですか」と驚いて、しかしそんなことが起こることは当分あるまいという風情で帰っていった。
ところが今、朝鮮半島をめぐる国際関係は大きく変わりつつある。欧州で起こった冷戦終結は、朝鮮半島に「一周遅れて」やってきた。朝鮮戦争は法的に言えば休戦状態にあるだけだが(韓国は休戦協定に調印していない)、将来、韓国・北朝鮮・米国・中国の間で平和条約が結ばれれば、国連軍は駐留を続けることができるかどうか。そして国連軍(とは言っても主体は米軍だ)が去れば、北東アジアの力のバランスは随分変わってくるのである。もっとも皮肉なことに、冷戦を終結させた欧州では、石油高騰のおかげで息を吹き返し15年間の屈辱を晴らさんものと意気盛んなロシアとの間で、新たな冷戦の足音が聞こえてきたのだが。
今回の韓国・北朝鮮の首脳会談を見る限り、事態はまだパラダイム・シフトにまでは至っていない。平和条約を交渉するため、米国・中国に4カ国会談開催を呼びかけてはいるものの、「平和条約の話は北朝鮮の核問題が解決してからだ」というブッシュ大統領の言葉がまだ歯止めになっている。結局、「米国は北朝鮮を攻撃しないし、北朝鮮は核兵器を開発しない」というボトム・ラインを確保しながら六者協議が続いていくのではないか。北朝鮮は次の米国政権を待てばいいのだし、ブッシュ政権は北朝鮮方面をとにかく静かにさせておいて、中近東に集中できればいいのだろうから。
だが朝鮮半島をめぐるパラダイム・シフトはいつかは起こる。取りあえず、次期米国政権の政策が次の分水嶺になる。朝鮮半島の情勢は朝鮮民族自身が決めるものである。その上で、この地域が国際紛争の舞台に再びなるのを防ぐにはどうしたらいいか、日本としても自分なりの考えを持ち、それを韓国、そして関係国に発信していかねばならない。
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