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2024-10-15 09:14
ASEAN関連首脳会議と世界金融情勢について
真田 幸光
大学教員
混乱の2024年にあって、今般、東南アジア諸国連合(アセアン)加盟国とその他の地域大国の首脳らは、ラオスの首都・ビエンチャンで開催された首脳会議で、安全保障に関するさまざまな問題を議論した。特に、アセアン会議に合わせて開催された東アジア首脳会議には、日本の石破新首相、中国本土の李強首相、米国のブリンケン国務長官、ロシアのラブロフ外相も参加し、中国本土が存在感を高めている東シナ海と南シナ海の情勢、更にロシアのウクライナ侵攻、また北朝鮮問題も含まれ、議論された。
例えば、今回は日米、フィリピンなどと中国本土が対立する、上述した南シナ海問題についても激しい議論が交わされ、また、アセアンも紛争回避の為の行動規範の策定を模索したものの、各国の利害が複雑に絡み、実現に至っていない。そして、今回の東アジアサミットでは、南シナ海を巡って米国と中国本土が激突、「東アジア首脳会議で南シナ海を巡り米国と中国本土が対立」、「アセアン協議は南シナ海とミャンマーに焦点が充てられた」、「アジアの脱炭素化に向けた行動計画は採択された」との総括が一般的にはなされている。即ち、しっかりとした進展が見られたイシューは残念ながら、脱炭素化に向けた動き以外、無かったと言える。尚、米国のバイデン大統領の二会合連続欠席に対して、「失望」や「米国の威信低下の表れ」「米国政権のアジア軽視」といった一部の声が水面下で出ている点も留意しておきたい。日米豪印の海上自衛隊と海軍などによる海上共同訓練となる「マラバール」が、インド東部のビシャカパトナムの港で開始された。周辺地域で海洋進出を進める中国本土の存在を念頭にしていると見られ、関係の強化を図っている。今後の動向をフォローしたい。
世界的な保険市場ロイズ・オブ・ロンドン(ロイズ保険組合)は10月9日、地政学的紛争がサプライチェーンや保険市場に打撃を与えた場合、世界経済は今後5年間で14兆5,000億米ドルの損失に直面する可能性があると警告している。ロイズはこの声明で、紛争地域のインフラへの致命的な被害と船舶航路の麻痺により経済的な影響が出るとも指摘している。ウクライナ及びパレスチナ自治区ガザでの戦争により、黒海と紅海の航路に既に支障が生じているとも指摘、ロイズは、世界の輸出入の80%以上に当たる約110億トンの 財(モノ)が常に海上にあることから、地政学的紛争による主要貿易ルートの閉鎖は「経済に必要なリソースにとって最大の脅威の一つとなる。」と懸念を示している。そして、筆者は、「借金をさせて消費をさせる、投資をさせる、という行き過ぎた信用創造を背景とした経済成長構造を良しとしていることから、ウクライナ危機以降の世界的インフレの発生以降の米国の急激な利上げによって、変動金利で借り入れをしていた債務者の返済が困難となり、これを遠因として、米国発「R(Recession・景気低迷)の恐怖」が、潜在的には存在していると考えている。再び、4%台に上がった米国失業率は7月には4.3%まで上昇、また、米国アトランタ連邦準備銀行が出す第3四半期の国内総生産(GDP)成長率見通しも2.9%から一時2%まで墜落し、米国経済の景気低迷リスクの可能性は高まっていると見ている。
しかし、このような状況にある中、WEEKLY BIZがグローバル金融専門家10人を相手に米国経済を緊急診断するアンケートを行った結果では、10人のうち9人が、「米国経済が軟着陸に向かって進んでいる。」と回答していると報告された。筆者はこうしたコメントを真っ向からは否定しない。米国も一旦、世界的インフレの傾向を受けて、0.5%もの政策金利引き下げを行っており、貸出金利が下がり、不良債権発生のリスクが高まっている、これを受けて、貸出人も融資継続の姿勢を示していることから、筆者が上述したような、「潜在的リスク」は消える可能性も秘めており、そうした意味では、「マーケットを落ち着かせるようなグローバル金融専門家のコメントは、貸出人をも安心させている。」とも言える。こうした中、ポイントはやはり、中東情勢を背景とした原油価格の上昇をトリガーとした、「世界的インフレの再燃が発生するか否か」にあると筆者は見ている。いずれにしても、様々な見方を参考にしておきたい。
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