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2007-09-18 13:31
北朝鮮情勢と自民党総裁選挙の行方
鈴木馨祐
衆議院議員
最近の六者協議の状況を見ていると、北朝鮮を巡る状況は、根本的にはこれまでとあまり変化していないのかもしれないと見える。北朝鮮問題の全てはもちろんこれまで同様金正日がどのような決断をするかに基本的にはかかっていると考えてよいだろう。それは核、ミサイル、拉致の全てにおいてである。そしてそこにアメリカ、中国、日本の行動が絡むという構図は基本的には変っていない。
現在の北朝鮮、というよりも金正日の立場を考えれば、軍部の掌握、経済成長が見込めない中での国民へのアピール、他国からの攻撃を避ける、等の観点から核、ミサイルの保持が最も重要な課題であることに変化はないと考えるのが自然であろう。金正日とすれば唯一の目的は自らの身の安全確保なのであるから、選挙で選ばれていない、すなわち失脚や攻撃が自らの死を意味するという自分の立場を考えれば、核やミサイルを完全に放棄する可能性は低いと考えた方がよいだろう。
そんな中、中国は北朝鮮に対する影響力を維持するために懲罰的な圧力をかけることこそあろうが、同盟国である北朝鮮の存在は自らへの批判をかわす意味でも非常に重要であり、北朝鮮が完全に核の可能性を放棄する状況にまで追い込む可能性は低いだろう。加えてアメリカが、イラク等の問題から東アジアへの関心を低下させており、北朝鮮が直接米本土への脅威とはなりえない状況では、丸く収まればあとはどうでもいいという態度に変りつつある。
そんな環境を見極め、北朝鮮としては核の申告において現在持つ核兵器の完全廃棄や濃縮ウラン計画の存在を査察する手段がこちらにない以上、テロ支援国家指定や重油の供給などを手に入れるためには戦略的にこれらについては形式上譲歩する可能性は高い。しかしながら、北朝鮮の核弾頭、ミサイルの現実的な唯一の標的である日本としては、「表面上の合意」と「実際にどうなっているのか」の乖離を厳しく指摘し、そのようなことがないように圧力をかけ続けなくてはならないはずである。
そして拉致問題について考えれば、それに関心を持つ唯一の国は日本であり、北朝鮮にその問題を解決するメリットと動機がないことを考えれば、解決は困難である。唯一解決しうるとすれば、その動機は日本による制裁の解除であり、このような圧力を信頼関係の構築のためといって問題解決する以前に解除してしまえば日本としての交渉カードを失うこととなり、対話のテーブルにすら北朝鮮がのってこないことになりかねない。
このように北朝鮮問題においては、核、ミサイル、拉致ともにほぼ唯一の直接の被害者は日本であって、解決を真剣に望んでいるのも日本だけである。他の国は当事者ではなく、いい加減な妥協をしても自らの国益にはあまり響かないという厳しい現実を我々は認識すべきである。北朝鮮が事態の打開をしようとするとすれば、その動機は日本やアメリカの制裁を解除してほしいということ以外には考えられず、場合によっては北朝鮮に真剣な対話の意思が無ければ体制転換まで考えざるを得ないという強い意志なくしては、こちらの出方に疑心暗鬼とならざるを得ない独裁体制の指導者が交渉に応じることは無いのである。
いま、六者協議の中で中国、アメリカのスタンスが正直揺らいでいる。また北朝鮮は核放棄や申告について表面的には応じるポーズを見せている。実は今ほど日本の態度に「甘さ」が許されないタイミングは無いのである。このことをくれぐれも主張させていただきたい。そして、小沢民主党が中国等との関係を重視する傾向がある以上、このことを担保することができるのは自民党のリーダーでしかない。そんな自民党のリーダーに、北朝鮮や中国の意図を性善説的に取る融和的なリーダーが選ばれる事態になることを私は心から危惧する。口で何を言おうと、これまでの言動や行動を見つめれば、その本当の想いを見抜くことはさほど難しくは無い。まだ結論は出ていないが、麻生氏劣勢、福田氏優勢の報道に接し、日本の国益への真摯な思いからその懸念もここに書かせていただいた次第である。
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