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2024-09-20 17:56
万感の思い、アメリカがようやく踏み切った利下げ
岡本 裕明
海外事業経営者
「万感の思い」などお前も大げさだな、と言われるかもしれません。そうでしょう、普通の方ならたかが利下げぐらいで、と思うでしょう。しかし、この4年半ぶりの利下げにはコロナという人類史上まれに見る大激動の歴史、そしてポストコロナで想定外の物価高という副作用に対して経済学と人間の英知による処方箋でようやく平静に向けて落ち着きを取り戻しつつあるのです。そして世界で最も影響力あるアメリカが通常の2倍幅で利下げをしたのは極めて意味深いと考えています。そう考えると壮大な話であります。人間の経済行動は基本的に平常時に平常心で判断することを前提にしています。我々が気兼ねなく消費できるのもそれは消費者が期待した通りのものが期待した範囲で入手できるという枠組みの中で行動しているからです。まぁ、一種の期待経済学。だから広告宣伝で「いつものお店がやっていて良かった」といった類のキャッチが多いわけです。この意味合いを理解することこそ重要なのです。
ところが想定外の事態が起きると人間はおおよそパニックに陥り、過剰な行動に走ります。最近では令和のコメ騒動がありましたが、かつては石油ショック、そしてコロナのマスク争奪戦もありました。パニックは必要以上に買いだめをして想定された平常時の需要をはるかに凌駕します。すると供給側サイクルが狂ってしまうことから価格や生産体制、更には人員配置やロジスティックスまで狂うわけです。令和のコメ騒動の場合は比較的軽微でしたが、コロナは全世界でそのサイクルが狂い、人々が家から出られないという究極の体験をしたのです。その時、人間のエゴや我儘など様々な欲望が渦巻き、法外な価格でも自分の欲望を満足できればそれを得るという常識では考えれらない経済行動すら起きたわけです。これは一部の価格を論外なところまで引き上げました。ところがそれが購入できた人はごく一部でした。99%の庶民はそれぞれの国の政治的判断にゆだねるしかなく、段階的な開放は人々に喜びと同時に通常以上の反動的な消費行動に及んだわけです。併せてアメリカやカナダでは労働者の賃上げ要求が激しくなります。卵が先か、鶏が先かの議論と同じように「物価上昇対策が先か、労働環境改善が先か」よくわからないケースもありました。BtoBの取り引きでは企業は様々な理由のもとサーチャージをつけ、実質値上げ、そしてそれを最終価格に転嫁せざるを得ないところまで追い込みます。この1年以上、テレビでは食品を中心に「今月は〇品目の値上げが予定されています」と報じ続け、それは経済状態の危機感を募らせ、煽ったわけです。ここはマスコミが反省すべき点。
ところが例えばカナダでは物価は明らかに鎮静化しています。原油価格が落ち着いていることからガソリンが1割以上安くなり、スーパーマーケットに並ぶ食品価格も明らかにコロナ前水準に近いものが並びます。また売れない商品の処分セールで5割6割引きが並んでも消費者が飛びつかない構図も見えてきています。これは今までは「焦る必要」があったのに「もう大丈夫」という安ど感が消費活動に出ているといえます。インフレというのは消費を抑え込む効果もあるのですが、その初期には消費を促進する効果があります。「急がないともっと上がるよ」と。カナダでは8月の消費者物価指数は2.0%上昇、つまり、目標値にたどり着きました。一部報道では次回の政策決定会合では0.50%の利下げもありうるのではないか、とささやかれています。私は0.25%だと思いますが、それでもカナダは病院から退院できる状態であります。
一方、アメリカは集中治療室から一般病棟に戻ったという状態です。今後については感覚的に申し上げれば2025年までかなり頻繁に0.25%刻みの利下げが継続的に行われるとみています。もちろん、諸般の状況次第ではこの平常運転に差し支える事態もあり得るでしょう。大統領選挙の結果と来年1月に就任後にどのような政策を打ち出すか次第で状況は変わります。また2つの戦争の行方も影響するでしょうし、中国経済の行方も気になるところです。よってあくまでもサプライズがないという前提に立つなら少なくとも年内は落ち着きを取り戻し、我々が先々を予見できる状況にある、と言えるかと思います。2020年初頭から始まったドタバタは4年半でようやく事態収拾に向かいます。今生きているすべての人にとってこの4年は忘れえぬ思いになるでしょう。そしてようやく平常に戻れるのは感謝そのものであります。
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