ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2024-07-22 12:44
第3期習近平体制の人事的特徴③
松本 修
軍事アナリスト(元防衛省情報本部分析官)
中国共産党の重要会議である第20期中央委員会第3回総会(以下、第20期3中総会と略)が、2024年7月15日から18日まで開催された。本来なら2023年2月に開催された第20期中央委員会第2回総会に続き、同年秋季の開催が予想されていたが年内には開催されず、内外から多くの揣摩臆測が出ていたが、この政治日程の大幅な遅れから何がみえるのか以下、考察してみたい。
年も変わり2024年4月30日に開かれた中国共産党の政治局会議は第20期3中総会の7月開催を決定すると、約2か月の準備を経た6月27日の政治局会議で7月15~18日開催という具体的な日程が明らかにされた。終了後のコミュニケ(中国語:公報)によれば、第20期3中総会は「より一層の全面的な改革深化と中国流の近代化(中国語:中国式現代化)推進に関する中共中央の決定」を審議・承認し、22日には左記「決定」の全文が公表された。その政策基調は「決定」の内容を精査し稿をあらためて述べたいが、今回のコミュニケの焦点は、昨年来の不祥事を受けた人事問題である。
コミュニケによると、国務院外交部長・国務委員を解任された秦剛の申立を受け入れ、中央委員会委員の職務解任を決定すると同時に、李尚福(中央委員会委員で前国務院国防部長・国務委員)、李玉超(中央委員会委員で前ロケット軍司令員)、孫金明(中央委員会委員候補で前ロケット軍参謀長)の重大な紀律違反・法律違反問題に関する中央軍事委員会の審査報告を審議・承認して、これら3名の党籍剥奪処分を確認した。これを受けて第20期3中総会は、党規約に基づき3名の中央委員(秦剛、李尚福、李玉超)の欠員を埋めるべく中央委員候補の丁向群(安徽省党委員会組織部長、女性)、ウ立軍(四川省党委員会組織部長)、ウ吉紅(北京師範大学校長、女性)の増補を決定したのである。しかし、該当部分を読んだ時、「昨年末に李尚福の後任として国防部長に就いた董軍(前海軍司令員)の中央軍事委員会委員への増補決定がない」と小生は違和感を感じたのである。コミュニケに示された人事問題は、言わば不祥事をめぐる「追認」人事であるが、対外的な軍事交流を主管する国防部長の「権威付け」として董軍の中央軍事委員会入りに注目していた小生は、このままでは国防部長(上将)は国務院(政府)閣僚の一員に過ぎず、格付けからすれば中央軍事委員会の国際軍事協力弁公室主任(少将)以下だと認識している。ここまでみてきて小生は、今後の中央軍事委員会における人事異動の可能性に思い当たったのである。
第20期3中総会のほぼ1か月前、6月17日から19日まで全軍政治工作会議が「中国革命の聖地」とされる陝西省延安で開催された。同会議は習近平中央軍事委員会主席(総書記)が自ら開催を提起したとされ、冒頭に習主席は近年の軍の規律違反・法律違反問題を厳しく糾弾して、軍の高級幹部の怠慢・惰性を叱責した。中央軍事委員会副主席の張又侠、何衛東、及び同委員である劉振立(聯合参謀長、前陸軍司令員)、苗華(政治工作部主任、前海軍政治委員)、張昇民(紀律検査委員会書記、前ロケット軍政治部主任)5名も出席したが、党籍剥奪処分を受けた国防部長経験者の魏鳳和(元ロケット軍司令員)や李尚福(元装備発展部長)の問題点を「黙認」見逃していた点では全員「同罪」であろう。特に全軍の思想政治工作を主管してきた苗華や、腐敗問題対処の責任者である張昇民には重大な責任があり、事態収拾が落ち着いたら「更迭」人事の可能性が考えられる。この点、第20期3中総会の直前、7月9日に行われた上将昇任式で何宏軍政治工作部常務副主任が中将から上将に昇任しており、苗華の後任人事を見越した処置であろう。したがって、今回の中央軍事委員会人事で、董軍国防部長のみの同委員就任を決定しても他の委員の交代人事があるとしたら「二度手間」になることから、副主席の交代まで視野に入れた大規模な軍人事が準備されているかもしれず、年内に再度中央委員会総会(第20期4中総会)が開催される可能性も否定できず、今後の動向が注目される。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会