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2022-12-22 11:51
台湾有事を避ける知恵は台湾にあり?
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「台湾で2024年1月に予定される総統選の前哨戦とされる統一地方選の投開票が26日に行われ、与党民主進歩党(民進党)が大敗した。敗北を受け蔡英文総統は民進党主席(党首)を辞任すると発表した。台湾メディアによると、事実上の首都、台北市と北部大都市の桃園市の市長選で、いずれも最大野党国民党の候補が勝利した。民進党はそのほかの県・市長選でも国民党に敗北し、複数の現有ポストを失った」(2022/11/27東京新聞)
この「民進党大敗北」の選挙結果について、対岸の中国政府は「平和を求める民意の表れだ」と論評したという。習近平氏の「してやったり!」と、にやけた顔が脳裏に浮かぶが、「鬼?」を笑わせる「知恵」が台湾人には有るのであろう。
アメリカのホワイトハウスが叫び、その声に同調して日本の保守政権もそのまま合唱に加わる「台湾有事」だが、どうも当の台湾市民の想いはそれらとは大きくずれているのではないか。蔡英文氏も声高に台湾独立とは言わなかったが、米・日政府は口では、北京政府との国交を始めるにあたって夫々「米中合意」、「日中合意」と「一つの中国」を承認しながら、その後も本音のところでは事実上「二つの中国」を継続してきたというのがこの半世紀間の歴史的事実であった。日米政府の「逆1国2制度」と言ったらよいかも知れない。こういう日米各国政府の「本音」のゆえに、うす黒く横たわっている国際問題こそが「台湾有事」の「根本原因」であろう。
かくなる日米両政府の思惑に符丁を合わせていたのが台湾の民進党であり、とりわけ蔡英文政権であった。しかし、これが地方選レベルとは言え大敗したということになれば、2年後の総統選挙の前哨戦として信号の色は青から橙色に変色してきたと言わざるをえまい。
「台北市長選は、国民党候補の前立法委員(国会議員)の蔣万安氏(43)が勝利した。台湾初代総統の蔣介石のひ孫で、「蔣ブランド」を武器に国民党の支持者層をまとめた」(同上記事)。
蔡英文政権の統治中に台湾の国民党の対中感情の変化が如何ばかりのものかは分からないが、現政権より親中感情は強いと見れば米中の「台湾有事」判断は大きな変革を要求されることになるのではないだろうか。少なくとも台湾海峡の波浪は今よりはるかに静謐になるであろう。
折しも日米政治はまるで台湾有事ありきの騒ぎで敵基地攻撃能力強化などと叫んでいる。「血は水よりも濃い」は人間社会の原理のようなもの。日・台や米・台それぞれの間の「血の違い」と、「本省人と外省人」という「台・中」間の「近縁性」の方がはるかに高くかつ近いはずだ。他家の夫婦喧嘩は盛り上がるほど楽しいには違いないが、アメリカ人はともかく、近所に住む隣人としての日本人である我らは「仲良きことは美しきかな」(武者小路実篤)の精神で両岸情勢見つめるのが圧倒的に好いことなのである。
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