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2022-11-04 16:33
中国4千年大王統治の時代を再現したい習近平氏
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「事大主義(じだいしゅぎ)」とは、明確な信念はないが、強いものや風潮に迎合することにより、自己実現を目指す行動様式である。東アジアでは外交政策の方針として用いられた(る)こともあるとものの本には書かれている。
元来の「事大思想」の「事大」とは、大に事(つか)えること、つまり、強い勢力に付き従うことを意味し、その語源は『孟子』の「以小事大」(=小を以って大に事(つか)える)の一節にある。中国では冊封体制(さくほうたいせい)、すなわち周辺諸国にとっての「事大」朝貢体制が築かれることになる。こういった背景から中国への事大主義と小中華思想は複雑な緊張・影響関係を保ったのであり、大国=中国に対してその周辺にあった小国は朝貢することでその存在が認められるような外交的関係を呼称したのであろう。たとえば明治以前の沖縄が中国に朝貢していた例や、それより遣隋使や遣唐使を派遣していた時代の古代日本もまたこれに近い枠組みの中の一存在だったのであろう。しかし、いま日常的に使われる「事大主義」とは「明確な信念がなく、強いものや風潮に迎合することにより、自己実現を目指す行動様式である」というのが普遍的な使われ方のようである。
さて、その中国、5年毎に一度行われる中国最大の政治的イベント=共産党大会が22日シャン・シャン・シャンと閉幕した。中国ではこの党大会時に68歳を超えた党幹部は引退するという不文律があったが、事前に噂されたようにそんな取り決めはまるで無かったかのように、すでに今年6月15日には69歳になっていた習近平氏の中国共産党総書記続投がこれまたシャン・シャン・シャンと決まったという。これこそがすでにして「事大主義」であり、今後少なくとも5年、いな習政権の終生続投かもしれず、中国は一段と強化された「事大主義」の時代に突入したと見なければなるまい。
秦の始皇帝から始まり、はるか毛沢東氏に至る数多の「大王」の時代に類似の「事大主義」時代が再びやってきたのかもしれない。しかし、中国といえども、いや中国ゆえになおさらのこと、毛沢東時代との時代環境は隔世の相違がある。「一衣帯水」どころかネット世界は地球の距離をゼロにしている。ネットルーターを政権が如何に操作しようとも国外の情報は隔壁を貫通して侵入してくる。習氏は、始皇帝をまねた独裁政権を永遠に維持するのも、より強固にするのも不可能と思わなければいけない。まして、過去一世代30余年にわたって、米国や日本で教育を受けた多くの知的階層が帰国して経済市場の中枢を構成しているはずである。彼らは、毛沢東に首を垂れ続けた習氏の世代の彼らとは別人種だ。
習近平氏は、大王統治の時代はとっくに終わったと知るべきである。その意識が無ければ、隣国ロシアのプーチン氏のようにピョートル大帝をモデルの事大主義に陥って身を滅ぼそうとしている者の同行者になってしまうことだろう。
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