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2022-08-26 19:57
中国の描く道筋と身動きが取れない米国
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
世界覇権国アメリカの衰退が叫ばれて久しい。その間の中国の台頭は目覚ましい。次の世界覇権国は中国だという考えは世界中で広がっている。アメリカを中心とする西側諸国の凋落も続いている。この中には日本も含まれている。西側以外の国々の経済成長は堅調である。大きく見ればアメリカを主軸とする西側世界が支配してきた世界構造が変化しつつある。
中国が世界覇権国になるための道筋を地理的に見るならば、太平洋に拡大するか(中国から見て東側に進む)か、ユーラシア大陸に拡大するか(西側に進むか)ということになる。太平洋に向かうとぶつかるのはアメリカである。太平洋は大きく分けて西太平洋と東太平洋に分けられる。現在の太平洋は全体がアメリカの海であり、アメリカは更に「インド太平洋」という概念を用いて、その支配を維持しようとしている。それに対して、中国は西太平洋、具体的には第二列島線までを中国の海にしたい構えだ。これに対抗するためにできたのがクアッド(日米豪印戦略対話、Quad)だ。
中国が西側に向かう先がユーラシアであり、その具体的な計画が一帯一路構想だ。そして、その道筋にある国々で結成されているのが上海協力機構(SCO)だ。この一帯一路計画では、ユーラシアの端のヨーロッパと中国がつながり、海路を通じてアフリカにまで到達する。これはインド洋も中国が取るということになる。中国の膨張に対してアメリカは防戦一方となる。中国がユーラシアを抑え、太平洋を抑えることで、アメリカは西半球に封じ込められるということになる。
現在のウクライナ戦争も大きく考えてみると、アメリカを軸とする西側世界と中国を軸とする西側以外の世界の衝突ということになる。米中はそれぞれが直接対決している訳ではないが、ロシアとウクライナによる代理戦争を戦わせているという構図になる。「HINA HAS TWO PATHS TO GLOBAL DOMINATION(中国には世界支配への2つの道がある)」(『フォーリン・ポリシー』誌、2020年5月22日)を参照していただけば、アメリカ当局もこうした中国の戦略や大きな構図を分かっていることは明らかであるが、身動きができない状態になっている。それはアメリカの国力の減退を自覚していることを意味している。中国が嫌い、怖いと感情的になるのではなく、まずはどういう意図を持っているのか、そして世界は大きくはどのように変化しているかを理解して、対策を立てることが重要となってくる。
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