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2022-01-28 21:34
アジア中期経済予測について
真田 幸光
大学教員
筆者自身は、ビッグデータに基づく定量分析が出来ませんことから、そうした分析のできる設備を持つ、客観的、科学的、中立的な機関、例えば国際通貨基金や経済協力開発機構などの機関のデータを基にして経済の議論をすることにしています。こうした中、やはり、そうしたデータを発表する機関として信頼できる日本経済新聞系列のシンクタンクである、「日本経済研究センター」が、「アジア経済中期予測」なる報告書を発表しています。今回はそれを引用させてください。
これによると、日本の1人当たりGDPは2027年に韓国に、2028年に台湾に抜かれる可能性があると報告されました。即ち、韓国と台湾の1人当たりGDPがそれぞれ年6.0%、8.4%伸びるのに対して、日本は2.0%の伸びに留まり、6~7年後には4万5,000米ドル水準で追い付かれるとの予測が示されたのであります。2020年時点で日本の1人当たりGDPは3万9,890米ドルと、韓国より25%、台湾より42%多く、また1986年には日本は韓国の6.2倍、台湾の4.4倍に達していました。これからすると、日本は韓国、台湾に既にかなりキャッチアップされていることを意味します。同センターは、「日本の1人当たりGDPは2007年にシンガポール、2014年には香港に追い付かれた。こうした指標は日本経済の停滞状態を示している。」と指摘しています。そしてその逆転現象の背景として、「労働生産性の上昇率の違い」を挙げました。
2020~2030年に韓国と台湾の労働生産性の伸びは1人当たりGDPを4ポイント以上押し上げるが、日本は2ポイント以下に留まると予想し、労働生産性が伸び悩む理由としては、デジタルトランスフォーメーション(DX)の失敗が指摘されています。一方、同センターは国家全体の経済規模を示す名目GDPで中国本土が2033年に米国を抜くと予想しています。昨年には米中のGDP逆転を2029年と予想していましたが、その時期は4年後ずれする見込みであり、それは、中国本土が相次いで強硬な金融引き締めに動く一方、米国は積極的な財政政策で景気が急速に回復した為としています。
そして同センターの予測では、米国のGDPは中国本土に一旦抜かれるものの、2056年には再逆転する見込みであり、それは中国本土の民間企業規制が生産性の伸びを鈍化させ、長期的には高齢化と人口減少で成長不振に陥るとの理由からであるとしています。かなりの中長期見通しで前提条件が狂えば結果は随分と異なることとなりますが、私はこれを見て、「日本の労働生産性の低さは本当にDXの遅れか?」と疑問を持たざるを得ません。本質的には、「日本は、人は人しかできないことをし、機械が出来ることはもっと機会にさせるという機械化を進める。一方、人しかできなとことを人にさせるのでありますから、付加価値が高い、従ってそれを給与に反映する。」と言う形で労働生産性を挙げることが必要ではないかと考えています。いずれにしても、参考となるデータでありました。
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