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2021-11-23 10:30
「真珠湾攻撃80周年の日米同盟」を読んで考える
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
姉妹e-論壇「百花斉放」11月22日付けの鍋島敬三氏の「真珠湾攻撃80周年の日米同盟」を読んだ。碩学の鍋島氏の論稿は、いつも感心しながら読ませていただいている。同論稿は述べる。「米の日本重視は、バイデン大統領が就任後初めて迎えた外国首脳である菅首相との会談後の共同声明で明記した『台湾条項』が典型的に示した」、「これは1969年佐藤首相とニクソン大統領との共同声明以来52年ぶり」とある。ここで無責任な外野から突っ込みを入れると、そのすぐあと米国は佐藤政権を裏切り、国連での台湾の議席維持を佐藤政権独りにかぶせ、台湾を捨て、中国大陸を選択したのだ。
コロナ騒動前の中国の知識人との会話で、ある知識人が述べた「中国と日本の両国にとり、米国との関係は最も重要な国家関係だ。しかし、米国との関係が良ければ日中関係が良くなるわけではない。中国も日本もともに米国に一部利用されているという側面を忘れてはならない」との言葉だ。同氏は近現代史の研究者であるが、彼は日本で有名な孫文との対照として、中華民国の政治家、外交官などとして活躍し、晩年は香港に移住した王正廷について、彼の日中関係改善への努力を論じた。
孫文は、ソ連を王道文化の国家と呼び、公道と仁義を重んじているとしたが、王は、ソ連や共産主義への評価は避け、それらを良いとも悪いとも言っていない。パリでの講和会議、ワシントンでの会議を経て世界は平和の兆しを見せてはいたものの、その実弱肉強食の要素は依然存在していた。特に、中国はその被害者だった。当時の列強の説く平和というのは、中国から利権を獲得するための列強間での平和を意味した。各国がいずれも中国において有利な地位を確立させたい。しかし、単独では成し遂げられないので焦っていたのだ。王は、その中で第一次大戦後における日本の国内政治の発展に着目した。ワシントン会議後日本は国際的な孤立を経験し、国内には依然として中国侵略を主張する意見がある一方対中不干渉を説く意見も登場していることに注目を払っていた。王は、日中間の敏感な問題は棚上げし、それらは日中両国の国民感情の改善を経て、徐々に解決へと向かえばよいと説いていた。
同氏は王の主張を述べた後、次のように述懐した。「日中間には信頼感の薄さや警戒感が色強く存在している。特に、歴史問題や領土問題により雁字搦めになっている。」「この打開への道は、一つには、歴史問題で中国がどれだけ被害者意識から抜け出せることができるかにかかる」と述べた後、ため息をついた。「外交においては最大限に原則を堅持すると同時に柔軟性も大事だ。どの国にとっても国益の最大化が必要だが、だからと言って国際的に自国の利益だけを押し通すことは不可能だ。相手国の国民感情を踏まえ、国際社会で共通に受け入れられる理念に基づくことも大事だ」(この会話の前の国際会議での、各国からの最近の中国の強権ぶりを責められたことを思い出したのか、大きくため息をついた。)
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