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2021-06-25 20:56
米中対決と日本
中山 太郎
団体非常勤職員
日本も米国も、将来の民主化した中国を期待し、中国の発展を様々な形で支援してきた。現在のコロナ禍は世界各国の経済社会の多くの領域において多大な影響をもたらした。世界経済が需給両面で凍り付くという前代未聞の経験もした。コロナの発祥地とみなされる中国は、いち早く感染拡大の封じ込めに成功した。この成功に自信を深めた中国は、今や益々強権的な態度で世界でふるまってもいる。米が今まで見下していた中国は、今や経済のみならず多方面での米国への強力な競争相手となりつつあり、米を焦燥させてもいる。今や米は戦後の長い間の先頭を切る国として金属疲労気味で、国際社会におけるその影響力が相対的に下がりつつあるともみられる。
こうした情勢下、日本は今後どんな立場をとるべきか考えてみたい。今のほとんどの香港や台湾の人々と同じように、多くの日本人も強権中国は嫌いだ。ある香港人は「近親増悪だ。兄弟げんかは赤の他人同士のそれよりも始末に負えないのだ」と述べる。日米同盟は多くの日本人が知るように、日本外交・安全保障の基軸だ。ともに民主主義と自由という普遍的価値を共有している。しかし、米の最近の知人から漏れ聞くのは米知識人の日本への疑念だ。口では米と一緒に中国と向き合うと言いつつ、本気なのか今一つ納得していないのだ。6月22日の「日経新聞」で秋田浩之記者が書いているが、日本の防衛予算は5兆円強でDPの約1%、韓国に2018年度で購買力平価で抜かれ、2023年度には実額でも逆転される見通しだとのことだ。米からの日本に対する要望は今後一層強まってくるであろう。自国の防衛力強化への国内世論の一層の盛り上げ、米にとり今や重荷となっ切ている東アジア地域などの安定に、より一層の日本の関与努力が必要とされよう。
米の知人は、公平に日本の防衛への消極的姿勢を作り出した責任の多くは米にもあると述べる。冷戦下、対ロシアとの対決に向け、中国の取り込みに隠密裏に活動したキッシンジャーは、中国の潜在的な敵日本について、日本の軍国主義復活を抑止する目的で「日米安保」があるのだ。爆発する瓶をふさぐ「瓶のふた」論を展開して説得したと述べる。これは冷戦後にまで続いた。最近の強権中国の台頭で、米もやっと慌てだしたのだと知人は述べる。米で聞かれる意見の中には、日本は中国の隣国であるのだから、もっと日本が負担を負うのは当たり前だというのがある。これは、逆手を取って、日本はこの地域の繁栄と安定のためには、中国との協調関係の維持の必要があるとも言えよう。
2019年末、台湾の秘宝、顔真卿の書の展覧会が国立東京博物館において開催され、中国大陸から多くの中国知識人が押し寄せた。感涙にむせる姿を現場で見て、改めて日中両国の文化的歴史的な極めて強いつながりを感じた次第だ。米の知人は、成人後の漢字の勉強は、ライシャワーやエズラ・ボーゲル氏のような天分のある人間を除き限界があるとも述べている。今の強権中国に対しての交渉は、多くの困難が予想され、担当分野の人間は本当に大変だろうが、それでも日本は、多角的な方面からのたゆまぬ姿勢で、今後中国が国際社会に参画し、より世界と協調的になることを求め続けなければいけないのだ。中国を排除、敵視するのは決して得策ではないのだ。これは、心ある、米の知人も同意見だ。隣国日本は、米中が決定的な対決にまでいかないように、あらゆる手段を尽くし、安全弁を重層的に構築してゆくことが求められている。
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